チェルノブイリ原子力発電所事故とは

カテゴリ: 原子力災害

読み: ちぇるのぶいり げんしりょくはつでんしょ じこ

 チェルノブイリ原子力発電所事故とは、旧ソ連・現ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号機で、1986年4月26日(モスクワ時間)に起きた原子炉事故を言う。「国際原子力事象評価尺度」(INES)のもっとも「深刻な事故」への評価となる「レベル7」に分類されている。

 事故は、運転中の原子炉で電源喪失の対応実験中に出力が急上昇、作業員のミスも重なり、高熱の炉心がむき出しになり、蒸気爆発と水素爆発で炉心が破損、建物の一部が破壊された。また減速材の黒鉛による火災が起こり、放射線被曝で運転員と消火作業に当った消防隊員28名が死亡。発電所の周囲30kmの住民等、約13万5000人が避難・移住し、村は廃墟となった。
 大量の放射性物質が放出され、セシウム137で1平方キロメートル当たり370億ベクレル以上汚染された地域はウクライナ、ベラルーシ、ロシアの計10万平方キロメートル近くに達した。欧州各地でも食物が汚染されて大量処分されたほか、全世界で放射能が観測され、地球規模での放射能汚染をもたらした。
 爆発した4号機に残る大量の放射線を出す放射性物質を閉じ込めるために、炉全体をコンクリートで封じ込め、その周りを鉄板で取り囲む「石棺」建設のために、延べ80万人が動員された。

 事故後、被害者数、被害が及んだ範囲等等については各種の推計がなされている。2001年にロシア副首相が、事故処理作業をした旧ソ連の5万5000人が放射線障害で死亡との推計を発表。2005年には国際原子力機関(IAEA)と専門家グループによる「チェルノブイリ・フォーラム」が、事故処理作業員と高濃度汚染地域の住民の今後を含めた死者は4000人との推計を発表。また2006年に世界保健機関(WHO)は対象地域を広げての推計で死者9000人、国際がん研究機関は欧州全域を含めて1万6000人、環境団体のグリーンピースは推計死者9万人などとした。

 なお、チェルノブイリ事故から20年目の2006年、世界保健機関(WHO)と国際原子力機関(IAEA)などが事故にともなう放射線の健康への影響を調べまとめた報告書「チェルノブイリの遺産」を発表。それによると、1986年の事故の発生から20年間で、放射線の影響による死亡者は47人。子どもの甲状腺ガンの患者は、事故から10年目の調査では800人だったが、20年目の調査では4000人以上に増加、そのうち9人死亡としている。
 また、チェルノブイリ事故から25年目にあたる2011年2月、国連科学委員会が事故に関する報告書を発表、子どもの甲状腺がんの発病は6000人以上、2005年までの死亡者は15人とし、今後も甲状腺がんの増加が予測され、その動向を見守る必要があるとした。

 今日でも原発から半径30km以内の地域での居住が禁止され、原発から北東へ向かって約350kmの範囲内にはホットスポットと呼ばれる局地的な高濃度汚染地域が約100箇所にわたって点在、ホットスポット内では農業や畜産業などが全面的に禁止され、その周辺でも制限されている地域がある。
 参考まで、距離感の理解の手助けに、もうひとつの史上最悪の原子力災害「レベル7」である東京電力福島第1原発事故の現場から各地までの直線距離を例示すると(km以下は四捨五入)、東京駅までが225km、仙台駅95km、新潟駅182km、富士山308km、静岡駅362km、大阪城582kmなどとなる。チェルノブイリ汚染地域範囲の目安である約350kmという距離は、福島第1原発を基点とすると北は青森県八戸駅(345km)、南は静岡駅手前あたりが範囲内となる。

 なお、先述のチェルノブイリ4号機の「石棺」は、25年を経過して、雨水などによってコンクリートの劣化や鉄板の腐蝕が進んだため、現在、100年の耐用期間を持つアーチ状のシェルターで石棺を覆う新計画が進行中である。

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