正常化の偏見とは

カテゴリ: 災害教訓

読み: せいじょうかのへんけん

 正常化の偏見とは、目の前に危険が迫ってくるまで、その危険を認めようとしない人間の心理傾向、「危険を無視する心理」を指す社会心理学、災害心理学用語。英語ではnormalcy biasで、正常性バイアスと言うこともある。

 この言葉は、社会心理学者・広瀬弘忠氏の著書「人はなぜ逃げおくれるのか」で防災分野にも広く知られるようになった。地震や洪水、火災などの災害に遭遇したときに、反射的に避難行動をとる人間は、実は驚くほど少ない。現代人は安全・便利に慣れてしまった結果、その対極にある自らの災害死などはまったく想定できず、予期せぬ事態に対処できないというもの。

 その際、「大したことにはならない(はず)」「自分(だけ)は大丈夫」と根拠のない思い込みにとらわれるのが特徴。この心理は、危険を無視することにで心的バランスを保とうとする一種の自我防衛機能と解説される。

 ちなみに、2003年に韓国・大邱市で地下鉄放火事件が発生し約200人もの死者が出たが、このとき、煙が充満しつつある車内で、乗客数人がなにごともないように座席に座っている写真が公表され、衝撃を与えた。この事例は正常化の偏見が招いた悲劇とされている。

 東日本大震災では大津波からの避難で釜石市の子どもたちが「率先避難者」となり、多くの大人がそれにつられて避難し、多くの人の命が助かった。片田敏孝・群馬大学教授の防災教育の成果だが、防災教育によって正常化の偏見を克服した貴重な事例ともなった。

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