津波てんでんことは

カテゴリ: 津波

読み: つなみてんでんこ

 津波てんでんことは、津波の被害を何度も受けてきた三陸地方沿岸部の人びとの“危機管理の知恵”で、津波から逃れるには各自てんでんこ(“てんでこ”とも言う。「てんでばらばらに」の方言)逃げろ、という意味である。

 津波てんでんこは、古来(直近まで)、三陸地方で「津波が来たらてんでんこ逃げろよ」という言い方で親から子へ伝えられる災害教訓である。それを岩手県大船渡市生まれの津波災害史研究家・山下文男(1924年~2011年12月13日)が「津波てんでんこ」と標準化・記号化して防災標語とすることを提唱し、防災分野では広く、津波避難の啓発の際に引用紹介されていた。東日本大震災後はこれが一挙に、津波避難の標語として標準化したと言える。

 言葉どおりの意味は、それ以上でも以下でもなく、「津波が来たらまず自分の命を守るために真っ先に高台に向かって逃げろ」という究極の危機管理ノウハウを示している。ここで重要なのは、“津波が来たら”だ。かつてテレビもラジオも津波警報もない時代は、地震の後、沖合いで白波を立てて押し寄せる津波を確認して初めて沿岸の人びとは避難行動を起こしたはずで、一挙に一刻の猶予もない状況に陥っただろう。
 危機管理において最悪の想定は“自らの死”だというが、津波(死の危険)に遭遇して、てんでんこに逃げることは決して不自然ではない。結果的に“家族や集落の全滅を防ぐための箴言”かもしれないが、そこまで意訳することは必要はない。

 しかし、これをあえて標語とするとき、利己主義ではないかという反発が出てくる。老いた家族、幼児、寝たきりの人はどうするのかと。そこでそういう見方に対して、山下文男は標語としての津波てんでんこの意義・趣旨を説明した。
 「他人を置き去りにしてでも逃げろ」ではなく、あらかじめ互いの行動をきちんと話し合っておくことで、離れ離れになった家族を探したり、とっさの判断に迷ったりして逃げ遅れるのを防ぐのが趣旨だ」と。

 津波てんでんこは、標語である以上は、家族の信頼関係や要援護者支援体制の整備のうえにこそ成立することを語らなければならない標語となった。

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