医療技術
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血管の傷をふさぐ接着剤 タラから開発 従来品の12倍の強度

 物質・材料研究開発機構(NIMS)のグループは、血管の傷をふさぐための接着剤として、魚のタラ由来のゼラチンを化学変化させた、人体に安全な接着剤を開発したと発表した。現在使われているヒトの血液由来の接着剤より接着力が高く、正常血圧の2.8倍でも問題ないとしている。


 現在、外科手術で止血などに使われているのは、ヒトの血液由来のタンパク質「フィブリン」から作られたフィブリン接着剤が中心となっている。しかし接着力が弱く、とりわけ血管内の成分が大量に外に漏れ出した部分では、はがれやすいのが問題となっている。

 この問題を解決するために、ブタ由来のゼラチンを使った接着剤が開発されたが、低温・高濃度になるとゲル状に固まるため、使用前に温水で加熱して溶かす手間があった。

 
 NIMSの生体機能材料ユニットの田口哲志氏のグループは、人体に害のない強度の高い接着剤を作ろうと、魚のタラに着目。タラは北半球の冷たい海底近くに生息するため、そのゼラチンは、濃度が高く低温下であっても固形化しない。そこでタラから採ったゼラチンに複数の薬剤を合成した接着剤を開発した。


 研究グループは、直径3ミリの穴を開けた新鮮なブタの血管に接着剤を塗り、生理食塩水を血管に注入し膨らませた。その結果、市販のフィブリン接着剤を塗った血管は数秒で破裂したのに対し、タラ由来の接着剤は、70秒もの長時間耐えることができた。


 耐圧強度を比較すると、フィブリン接着剤は29㎜Hgであるのに対し、開発した接着剤は12倍もの341㎜Hgまで耐えられることがわかった。これは健常者の正常最大血圧(約120㎜Hg)と比べても、2.8倍以上の耐圧強度だという。


 さらに、この接着剤を患部に塗ると30秒以内に硬化し、8週間以内に体内に吸収されることも確認された。


 研究者の田口哲志氏は「心臓血管外科だけなく、外科や内科などさまざまな分野への応用が期待できる」として、筑波大学で臨床応用に向けた基礎データの蓄積を進めることにしている。


 なおこの研究成果は近く学術誌「Journal of Biomedical Nanotechnology」の電子版に掲載される見通し。

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