医療技術

うつ状態を繰り返すマウス 理研が作製 うつ病解明へ前進

 理化学研究所のグループは、「ミトコンドリア病」の患者がうつ病や躁うつ病を併発することに着目して、その原因となる遺伝子を操作することで、自発的にうつ症状を繰り返すモデルマウスを初めて作製し、うつ状態の原因が脳内の特定部分の機能障害と関係がある可能性が高いことを突き止めた。


 うつ病や躁うつ病の治療には、抗うつ薬や気分安定薬などが使われているが、すべての患者に有効というわけではなく、副作用もある。患者が増える傾向にあるなかで、副作用のない新薬を開発する期待が高まっているものの、病気の原因が分からず、患者と同じような症状を示す動物モデルが存在しなかったことから、新薬の開発は進んでいない。


 理研・脳科学総合研究センターの加藤忠史チームリーダーらのグループは、細胞内のミトコンドリアの働きが低下する「ミトコンドリア病」という難病がうつ病や躁うつ病に似たやる気のなさや、睡眠障害、緩慢な動作、疲れやすいなどの症状を示すことに着目し、その原因となる遺伝子の変異が神経で働くマウスを作製した。


 観察の結果、このマウスが体内時計の異常や性周期にともなう活動量の低下を示すことを2006年に発見。その後の分析で、活動が低下する時期が、平均すると半年に一度訪れ、定期的にうつ状態を示すことを確認した。


 うつ状態のマウスに抗うつ薬を投与すると、うつ状態になる回数が減少することもわかった。研究グループはさらにモデルマウスのうつ状態の原因となる脳を解析し、ミトコンドリアの異常が「視床室傍核(しつぼうけい)」の神経細胞と関係が深いことを発見した。


 この「視床室傍核」が、人間では視床室傍部のどの領域に相当するかは完全には分かっていないが、今後の研究でうつ病が、患者の脳内のどの部分で発症するかが確認できれば、新たな治療薬の開発や診断法につながるものと期待が寄せられている。


 なおこの研究成果は、米科学誌「Molecular Psychiatry」電子版に掲載された。

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