軍事

【時象淡描】福島第一原発へのテロ想定訓練 自衛隊は?

 11日に東京電力福島第一原発へのテロリストによる襲撃を想定した警察庁と海上保安庁の合同訓練が行なわれる。

 

 訓練場所は福島第二原発で、警察の特殊部隊「SAT」や海保のテロ対処部隊など約150人が参加し、報道陣にも公開される。

 

 しかし、その訓練に自衛隊の姿はない。現在の法制度上、参加できないのだ。

 

 10日の菅義偉官房長官の記者会見でも、記者から「自民党内でも、自衛隊が原発の警備をできるようにすべきとの声があるが…」との質問があがった。

 

「原発にテロがあれば大変な事故につながる。政府としてもそういうことを検討すべきだろうと思う。ただ現実的にできることは、まず警察と海上保安庁…」

 

 官房長官もなんとも歯切れが悪い。

自衛隊法81条の2 警護出動

 現在の自衛隊法を素直に解釈すれば、自衛隊が原発へのテロを警備するには、警察と海上保安庁の手に負えない事態に立ちいたり、自衛隊に「治安出動命令」が出されてから、ということになる。

 

 「原発へのテロで警察や海上保安庁の特殊部隊が手に負えない事態」

 

 もしそんな事態が起きるとすれば、原発がよもや無傷でいられるとは到底思えない。そんな事態になってから自衛隊が駆けつけても遅きに失することは素人が考えても明らかだ。

 

 アルカイダのテロを受けて2001年11月に自衛隊法が改正され、テロ攻撃に対し事前に警備活動が行なえる「警護出動」が可能になった。

 

 しかし、この警護出動の対象は日本国内の米軍施設か自衛隊施設に限られている。原発の警護には出動できない。

だから政府与党内でも、この警護出動の対象を拡大することなどが検討されている。

 

 

「ないこと」にする風習

 かつて米ソ冷戦構造の時代に、自衛隊は主にソ連の侵略を想定していた。

 

その時代、すでにソ連は大陸間弾道弾(ICBM)から中距離核ミサイルまで各種取りそろえて配備していたが、今のように自衛隊がペトリオットPAC-3などの迎撃ミサイルを配備できるような政治情勢ではとてもなかった。

 

 だからソ連が日本を侵略する際には、間違いなく政経中枢などへのミサイル先制攻撃があると分かっていながら、防衛庁(当時)も自衛隊もそのパターンは「ないこと」にして、「ソ連は航空優勢を確保して攻撃してくる(つまり、戦闘機が最初に攻めてくる)」というシナリオで、すべての作戦計画が策定された。

 

 作戦計画を立てている本人たちも、「その作戦では守れない」とよく分かっていた。

 

 そして世の中の環境が醸成され、PAC-3がようやく自衛隊にも配備される頃には、とっくにソビエト連邦は崩壊して、友好国になっていた。

原発へのミサイル攻撃

 いまやPAC-3が配備されたが、これで北朝鮮からのミサイル攻撃は防げるのか?

 

 これまた、たぶん『ノー』だろう。

 

 PAC-3の守備範囲は半径約20キロ。政経中枢である首都圏だけならなんとか防衛できるかもしれないが、全国17カ所の原子力施設も目標にされたらとても数が足りない。

 

 そもそも法制上、自衛隊の人間が警備してはいけない原発をミサイルが警備してよいのか?

 

 原発にミサイル攻撃されたら、この国はひとたまりもないだろう。

 

 いや、根拠もなくおどかしているわけではない。先方がそう言っているのだ。

 

 先月10日付けの朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、日本には原発がいたるところにあるとして、北朝鮮が攻撃を加えれば、「1940年代の広島・長崎の核の惨事とは比べものにならない被害を被ることになる」と日本に対し警告している。

 

 だからと言って、PAC-3を増やせとか法改正せよ、といった「政治的言明」を明らかにしたいわけではない。

 

 ただ、かつてのソ連の時と同じように、1発のミサイルも発射されることなく、北朝鮮が平和的な体制に移行することを願うのみである。

 

 どうもそれが日本という国の長年にわたる流儀のようだから……。

 

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