歴史

防災歳時記5月18日 高速増殖炉「もんじゅ」 現代の錬金術

核燃料サイクルは夢のエネルギー技術

 今から22年前の1991年の今日5月18日に、福井県敦賀市で高速増殖原型炉「もんじゅ」は試運転を開始した。4年後に発電を開始するが、翌年1995年には冷却用ナトリウム漏えい事故が発生し運転を停止する。

 

 運転を再開したのは、15年後の2010年5月。しかし再開から4ヶ月足らずで、炉内に機器が落下して、また運転中止。そして15日に、大量の機器点検漏れの対応を問われ3回目の運転再開中止となり、昨日、日本原子力研究開発機構の鈴木篤之理事長が引責辞任した。

 

 試運転からの22年間で、もんじゅが稼働できたのは、たった5年あまり。これまでに1兆円以上が使われた。

 

 プルトニウム239とウラン238を燃料に核分裂反応により生じる高速の中性子で、ウラン238をプルトニウム239に変え、新たな燃料に使う。

 

 核燃料サイクルは現代の魔術のような『夢のエネルギー技術』だった。

 

 いやそれを言うなら、原子核の崩壊により、ある元素が他の元素に変化する現象を利用した核技術それ自体が『現代の錬金術』だ。(天然の金を採掘するよりコストが高いから誰もやらないだけで、実際、鉛とか水銀を金に変えることは理論上可能だ。放射線でピカピカの『金の同位体』ができてしまうかもしれないが…)

 

ニュートンは最後の魔術師

 錬金術と言えば、自然科学の歴史の中で、科学と錬金術は「2つの顔の表と裏」とも言える関係だった。

 

 自然科学技術を基盤にした現代文明の基礎を作ったアイザック・ニュートンも物理学の研究ととともに錬金術の探求にいそしんでいた。

 

その研究対象は、あのハリーポッターでもモチーフに使われた『賢者の石』(錬金術では卑金属を貴金属に変えると信じられていた物質)を発見すること。

 

 ニュートンの錬金術書のコレクターとしても知られる、20世紀を代表する経済学者ケインズは、「ニュートンは近代科学の祖ではなく、最後の魔術師」と評している。

 

 「ありふれた物質から貴重な物質を生み出す」

 

 それは、科学者の見果てぬ夢なのか?

 

 日本原子力研究開発機構が那珂核融合研究所で研究開発しているトカマク型臨界プラズマ実験装置JT-60は、もんじゅよりさらに進んだ『核融合炉』の実現を目指している。

 

 太陽表面で起きているのと同様な「核融合反応」を利用する核融合炉は、この地上に太陽を作る夢の技術だ。ケタはずれのエネルギーを生み出すが、ケタはずれに難易度が高い。

 

 今週、日本の原子力政策は大きなターニングポイントを迎えた。

 

 東日本大震災以降、全国の原発が停止し、火力発電への依存度が高まる一方で、ハワイの観測所ではC02濃度が最高値を記録した。

 

 核の危険と地球温暖化と言うトレードオフの関係がある中で、今のエネルギー消費のすべてをクリーンエネルギーで代替する道のりは遠く、膨大なコストがかかる。

 

 もう選択肢は、現在の我々の生活や経済活動自体を考え直すしかないのか?

 

 現代の錬金術に「ノー」が下されたということは、最後の魔術師ニュートンが生み出した「現代科学技術文明」それ自体が黄昏の時を迎えているということなのかもしれない。

 あなたにオススメの記事