地震

【時象淡描】南海トラフ地震 予測できないとは言ってない?

 中央防災会議の作業部会が28日、南海トラフ巨大地震に関する最終報告を公表した。この最終報告には「南海トラフ巨大地震について確度の高い予測は極めて困難」とする調査部会の報告が盛り込まれている。

 

 各メディアは、この報告について「地震予知に否定的」との論調で報じているが、ここは今一度冷静に読み直してみる必要がある。

 

 例えば、国内で唯一、地震予知の可能性がある「東海地震」については、昭和53年に「大規模地震対策特別措置法」が制定され、気象庁は前兆現象である「前駆すべり」が検知できた場合、東海地震が発生するおそれがあることを地震予知情報として総理大臣に報告し、閣議を開いて地震災害に関する警戒宣言を発令することになっている。

 

 ここで想定されている「地震予知」とは「警戒宣言発令」につながる、100%間違ってはならない?極めて「責任重大な予知」だ。

 

 確かに、これは素人目に見てもハードルが高すぎる。

 報告書でも東日本大震災の際に、明瞭な前駆すべりが検知できなかったこと(つまり必ずしも大地震の直前に前駆すべりが検知できるとは限らない)や南海トラフ地震の発生のしかたが多様であること(必ずしも一気に来るわけではなく、安政地震の場合は、東海地震の32時間後に南海地震が発生している)などを直前の予知が困難な理由に挙げている。

 

 さて、ここまでは各メディアが報じている通りだが、「(直前の)予測ができないか?」という話になると、ある種の「希望」ともとれる知見も散見される。

 

「南海トラフ域は日本海溝域に比べると、現状の観測技術で検知し得る前駆すべりが生じる可能性が相対的に高い」

 

「ゆっくりすべりが拡大しているなど、プレート間の固着状態に普段と異なる変化が観測されている時期には、不確実ではあるが、地震が発生する危険性が普段より高まっている状態にあるとみなすことができる」

 

 さらに地震予測に対する国際的な認識と取り組みとして、国際的に地震予測においては確率が用いられるべきことや、電磁気学的な予測研究については、国際測地学・地球物理学連合(IUGG)のワーキンググループを中心に研究が進められており、「統計的に有意な結果が得られているものの、発生場所及び規模の予測に不確実性がある」と言及している。

 つまりこの報告書が言わんとしていることは要約すればこうだ。

 

「前駆すべりの検知にせよ、電磁気学的な予測にせよ、ある一定の不確実性の中で、地震が発生する可能性について確率として予測することは可能かもしれないが、現在の法律で要請されている『前駆すべり検知→警戒宣言』といった想定に供せる100%確実な?地震予知はできない」

 

 そりゃそうだ。

 

 だが天気予報でさえ「降水確率」になっているこのご時世、「地震発生確率」じゃいけなかったのか?

 

 そもそも国民は南海トラフ地震(東海地震)が100%予知できると本当に今まで信じていたのか?

 

 「地震発生確率」だって、ないよりはあった方がマシだ。

 

 「予知はできないという前提に立って防災体制を見直す」のは大事だが、その前に「大規模地震対策特別措置法」を改正して、「地震発生確率」の的中率を向上させるために、前駆すべりの検知技術や電磁気学的な予測研究を前に進めよう、というオープンな議論はないのか?

 

 事が事なだけに、われわれ国民も研究者や行政に過大な責任を押し付けがちだが、国民にとって最も得策なのは、研究者を責任のくびきから解き放って、もっと自由闊達な議論と研究をしてもらうことなのではないか。

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