医療技術

うつ病患者の脳内で何が起きてる?神経伝達物質を捉えた画像 初の研究

 慶應義塾大学などの共同研究グループは、うつ病患者の脳内で神経伝達物質であるノルアドレナリンが異常を起こし、物事を判断する際の注意・覚醒機能に影響していることを、画像検査で突き止めた。新たな治療薬の開発につながるものとして期待されている。

 

 厚生労働省の調査で、2008年には国内で104万人を超えたと推計されるうつ病は、これまでに経験した患者の割合を示す「生涯有病率」が3〜7%と、年々増加の傾向にあるが、発症メカニズムについてはいまだ解明されていない。

 

 死亡した患者の脳を対象にしたこれまでの研究で、原因のひとつとして、神経伝達物質であるノルアドレナリンが関係していると指摘されている。

 

 これらの研究結果をもとにした抗うつ薬が複数使われているが、生きている患者の脳内でどのような変化が起きているのかを調べる方法はなく、患者ごとに異なる症状や病態に対応できる薬の開発が難しいのが現状だ。

 

 そこで、慶應義塾大学の三村將教授と量子科学技術研究開発機構などの共同グループは、不眠や食欲低下、自分を責める傾向が強いうつ病患者19人を対象に、細胞の動きを断層画像としてとらえる「PET検査」を実施。

 

 その結果、大脳の中心に位置する視床で、ノルアドレナリン神経物質を取り込む機能のある「ノルアドレナリントランスポーター(NAT)密度」が、健常者に比べて28.2%高いことが判明した。

 

 次に、注意機能を調べる検査を行ったところ、NAT密度が高い患者ほど、視覚的な違いを見つける反応時間が短く、視覚的探索機能が高いことがわかったという。

 

 研究グループは「自分を責める傾向が強く、不眠や食欲低下の強いうつ病患者の治療には、ノルアドレナリン神経伝達機能の調整が有効」であるとして、今回の研究成果が、効果的な抗うつ薬の選択や、新たな治療薬の開発に結びつくと期待を寄せている。

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