医療技術

iPS細胞から卵子作成 九州大がマウスで成功 不妊治療に光

 九州大学の研究グループは、マウスの尻尾から作ったiPS細胞を使って卵子を大量に培養し、受精させて子マウスを誕生させることに成功した。卵子形成の過程が解明され、不妊原因の究明や治療法の開発に結びつく研究成果だとして期待が寄せられている。

 

 卵子は、身体を構成するさまざまな細胞の元となる多能性幹細胞から、長時間かけて複雑な過程を経て卵子が形成されるため、体外で人工的に再現することが難しく、形成過程はこれまで十分に解明されていなかった。

 

 九州大大学院の林克彦教授は、京都大学大学院の講師だった2012年、マウスのiPS細胞から、卵子や精子の源となる「始原生殖細胞」を作ることに成功。当時は始原生殖細胞をマウスの卵巣に移植して約5週間かけて卵子を作っていたが、この方法では、移植したマウスの体内で拒絶反応が起こったり、がん化するリスクが高いなどの制約があった。

 

 そこで、今回は約5週間の卵子形成過程を三段階に分け、各期間について3年間かけてさまざまな培養条件を試した結果、1回の実験で約600個から1000個の卵子を作ることに成功した。この卵子を野生のオスの精子と体外受精させて子宮に移植したところ、健康なマウスが誕生したという。

 

 今回の研究成果によって、理論的にはヒトのiPS細胞から卵子を作り、体外受精で子供を誕生させることが可能になった。現在の国の指針では、ヒトのiPS細胞から卵子や精子を作る研究は認めているものの、体外受精については禁じているため、生命倫理上の議論も必要とされる。

 

 研究グループは「体外で卵子を培養する技術の開発によって、卵子ができる過程を解明し、不妊の原因究明や治療法の開発につなげたい」と期待を寄せている。

 

 なおこの研究成果は、英科学誌「ネイチャー」に掲載された。

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