医療技術

人体に新しい臓器見つかる ダ・ヴィンチ以来軽視されてきた「腸間膜」に注目

 

 杉田玄白らが翻訳した『解体新書』の元となった『ターヘル・アナトミア』の刊行から約300年の時を経て、アイルランドの大学病院の外科研究チームは、人体に未知の臓器があることを突き止めた。

 

 リムリック大学外科医学部のカルヴァン・コフィー教授のチームは昨年11月、世界五大医学誌の『ランセット』に、これまで臓器を支えるためだけにあるとみなされていた「腸間膜」が、他の臓器とつながったひとつの臓器として存在している証拠を見つけたと発表した。

 

 腸間膜は、腹壁にくっついていない小腸を、背中側の腹壁につなぎ止める役割をするもので、薄い膜が重なった二重構造をしている。

 

 解剖学の歴史を振り返れば、ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチは、大量の人体解剖図を残していることで知られるが、天才をしても腸間膜を単なる膜としかとらえていない。以来、現代に至るまで、多くの医学書や解剖学の研究書が出版されてきたが、腸間膜は一貫して「他の臓器とは分離した器官」に過ぎないと軽視され続けてきた。

 

 ところがコフィー教授らは2012年、100年以上にわたって信じられてきた定説を覆し、腸間膜が「他の臓器と連続した構造」であると発見。今回発表した論文で臓器であることの証拠を提示した結果、158年前に英国の学者が著した解剖学研究の権威『グレイの解剖学(Gray’s Anatomy)』が内容を訂正することに決まった。

 

 今回の発見で、人体の構造が大きく変わるわけではなく、その役割についても詳しくはわかっていない。しかし、コフィー教授は「腸間膜を臓器として理解することで、腹部の疾患を正確にとらえ、外科手術の際に患者の負担を少なくしたり、合併症のリスクの軽減や回復期間の短縮化がはかれる」と期待を寄せている。

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