医療技術

アトピー性皮膚炎を起こす「かゆみ物質」特定 治療薬開発へ前進

 日本人の1割近くがかかっているアトピー性皮膚炎について、九州大学の研究グループは10日、かゆみを起こすたんぱく質を特定し、そのメカニズムを解明したと発表した。アトピー性皮膚炎のかゆみを根元から断つための新たな治療薬に結びつく発見だとして期待が寄せられている。

 

 国民の7〜15%が発症している国民病とも呼ばれるアトピー性皮膚炎は、一般的なかゆみの治療に使われる抗ヒスタミン剤では効かないことから、別のかゆみ物質の存在が指摘されてきた。

 

 九州大・生体防御医学研究所の福井宣規主幹教授らのグループは、「ヘルパーT細胞」と呼ばれるリンパ球に、「DOCK8」という遺伝子がない患者が深刻なアトピー性皮膚炎を発症することに着目。

 

 遺伝子操作で、細胞にあるDOCK8の機能を失わせたマウスを作ったところ、感覚をつかさどる脊髄神経に多い「IL- 31」というかゆみ物質が過剰に作られて、深刻な皮膚炎を発症することがわかった。

 

 さらに、野生のマウスと比較した結果、「EPAS1」という遺伝子が、かゆみ物質の増加に関与していることを突き止めた。そこで、EPAS1ができないように遺伝子操作したマウスと、DOCK8機能を失わせたマウスを交配させたところ、アトピー性皮膚炎を発症しないマウスが生まれたという。

 

 このメカニズムは人間のアトピー性皮膚炎患者でも確認されており、EPAS1の機能を抑えたところ、かゆみ物質が著しく減ったという。

 

 アトピー性皮膚炎の治療は現在、ステロイド剤を塗布したり、免疫抑制剤を服用する対処療法しかないが、かゆみ物質ができるメカニズムが解明されたことで、新しい治療薬の開発に結びつくものと期待されている。

 

 なおこの研究成果は、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に9日発表された。

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