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脂肪から作った幹細胞治療で失明 米フロリダ州で3人 安全性が未確認

 理化学研究所のチームが、iPS細胞から作った網膜シートを加齢黄斑変性症の患者に移植したところ、視力の低下が止まったニュースは記憶に新しいが、米フロリダ州のクリニックでは、未承認の治療法を受けた三人の女性が失明する事故が起きた。

 

 米スタンフォード大学の眼科医の権威、ジェフリー・ゴールド教授は、国際医学誌『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に16日に公表された報告書で、フロリダ州にある眼科診療所で幹細胞治療手術を受けた72歳から88歳の女性患者三人が、術後に視力を失ったと発表した。

 

 患者は、網膜の細胞に溜まった老廃物によって、中心部にある直径2ミリ程度の黄斑に障害が起きて、視力が徐々に低下していく加齢黄斑変性症にかかっていた。この病気は年齢を重ねるほど発症率が高くなり、欧米では成人の失明原因の第1位だとされる。症状が進むと、見ているものの中心部が歪んで見えたり、視力低下が進んで中心部だけ黒い点のように何も見えなくなる場合がある(日本眼科学会)。

 

 問題のクリニックは2015年に、三人の患者に「臨床試験」だと称して、患者自身の腹部の脂肪細胞から作った幹細胞を使った治療を実施。通常であれば、片目ずつ時間をおいて手術するところを、このクリニックでは両目とも合わせて1時間足らずで終わらせたという。

 

 患者は、治療費として一人5000ドル(約57万円)支払ったが、術後1週間以内に網膜剥離や出血などの合併症を起こし、治療前には0.67〜1.0ほどあった視力が、まったく見えなくなってしまった。

 

 患者のうち二人は、その後、マイアミ大学で治療を受けたが、担当した医師によると、「可能性はゼロではないが、視力を取り戻すのは極めて困難だ」という。

 

 網膜の再生治療をめぐっては、理研の高橋政代プロジェクトリーダーと神戸市立医療センター中央市民病院の共同チームが、2014年9月、加齢黄斑変性症の中でも「滲出型」と呼ばれるタイプの70代の女性患者の右目に、患者由来のiPS細胞から作った網膜シートを移植し、1年間の経過観察を経て、視力の維持や安全性が確認された。

 

 対照的にフロリダのケースは、視力回復につながるという安全性が確立されておらず、食品医薬品局の承認を受けられていない段階だった。報告書の中でゴールドバーグ教授は、「高齢の患者が、医師から治療法を勧められれば、合法か否か判断するのは難しい」と述べて、無謀な治療を行おうとする病院や医療従事者への監視体制の必要性を訴えている。

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