歴史

防災歳時記7月8日 大列車強盗犯の脱獄

 今から48年前の1965年の今日7月8日、英国のワンズワース刑務所から一人の男が脱獄した。

 

 男の名前は、ロナルド・ビッグズ。1963年にロンドン郊外で起きた、有名な「大列車強盗」の犯人の一人。

 

 「大列車強盗事件」は、ビッグズらの一味が鉄道信号に細工をして、大金を乗せた列車を途中で止め、260万ポンド(現在の価値にすると60億円ぐらいにでもなろうか)を強奪したと言う前代未聞の犯罪だった。

 

 しかし、一味はスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)の活躍により、ほどなく逮捕。ビッグズも懲役30年の刑でワンズワース刑務所に収監された。

 

 だが、ビッグズは刑務所の中で、同じ受刑者の一人を買収していた。その受刑者が先に出所した後、つまり1965年7月8日の晩、縄ばしごが投げ込まれ、ビッグスはまんまと脱獄に成功した。

 

 彼は、フランスで165カ所も整形して別人になりすまし、オーストラリア、ブラジルと逃亡を続け、2001年に自らの意思で英国に帰国するまで約36年間、刑務所に戻ることはなかった。

 日本にもロナルド・ビッグズに負けない昭和の脱獄王「白鳥由栄」がいる。

 

 戦前・戦後と4回の脱獄を成功させた白鳥がビッグズと違うのは、すべてを自分だけの知力・気力・体力によって脱獄を成功させていることだ。

 

 吉村昭の小説にもなった白鳥の脱獄は凄まじいものがある。監視口の鉄枠に毎日、出された味噌汁を吹きかけて、その塩分で錆びさせたり、手錠や鉄格子を毎日揺さぶり、打ちつけて、少しづつ破壊していくなど、まさに超人的な執念と体力と知力の成せる技としか言いようがない。

 

 あまりに凄烈な白鳥の脱獄シーンは、網走刑務所の近くにある「博物館 網走監獄」で今も展示されている。

 

 そして、もう一つ白鳥がビッグズと異なる点。それは、「動機」だ。

 

 彼は常に、刑務所内での「非人道的な待遇」や「裁判での不公正」に対して怒りを感じた場合にのみ脱獄している。

 

 逆にきちんとした待遇を受けたり、優しくされた人には義理堅く、自分に対して優しく接してくれた看守のところに脱獄後自首してきたり、職務質問の時に、タバコをくれた(当時は貴重品だった)警官に自分が脱獄囚であることを話して逮捕されたりしている。

 日本は世界でも類を見ない脱獄が少ない国だ。刑務所内で非人道的な待遇を受けることも極めて少なくなったそうだ。

 

 昨年1月に、広島刑務所から中国人が脱獄したが、わずか2日で「お縄」になった。話によると「確保」というよりは、自分から「舞い戻った」という方が正確らしい。

 

 いったん刑務所の外に出てみれば、「シャバ」は寒風吹きすさび、食べるものもなく、国際電話をしてみても中国の家族は電話に出てくれない…。

 

 つまりは刑務所の方がすべてにおいて「シャバ」より暮らしやすいのだ。

 

 この広島刑務所に尾道刑務支所という60歳以上の高齢受刑者を収監する施設がある。寝たきりや認知症の受刑者もいて、刑務官が介護している。

 

 巷でニュースになっているような、介護者による虐待もない。

 

 政治評論家の板垣英憲さんによると、だから出所した人の約8割が戻ってくるとのこと。

 

 「シャバ」で身よりもなく、経済的にも不安な生活を過ごすなら「ムショ」の方が何倍か良い。

 

「絶対戻ってきてやるからな!」

 

 出所時に、そんな捨て台詞を残す受刑者もいるとか。

 

 どうでもよいが、せめて「ムショ」よりは「シャバ」の方が良い、と受刑者が思うくらいには暮らしよい世の中にはならないものか。

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