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イタリア急須で楽しむイタリア的「家庭の味」

アメリカはイタリア食文化の宣教師

 アメリカは日本にとってイタリア食文化の宣教師だ。

 

新しいイタリアの食品が日本に伝わる時、必ずアメリカを経由して、米国バイアスがかけられた状態で伝来する。

 

昭和な時代、喫茶店で食べているナポリタンをイタリア料理だと思い込んでいた。

 

たぶんその原型であろう「アマトリチャーナ」を初めて食べた時の衝撃。

 

まったくの別物だった…

 

これまた昭和の時代に「ピザパイ」なる名称でこの国に伝わり、デリバリー系のピザが隆盛を極めて久しいが、それが「ピッツァ」とは似て非なる食品だったことを知ったのは、本場で修行したシェフたちによる本格的なイタリアンレストランが出来てからだった。

シアトルの空気をまとったイタリア

  そして現在は、スタバによってアメリカナイズされた、いや「シアトルの空気をまとったイタリア」が全国津々浦々に伝播されている。

 

カフェ・マキアート」という飲み物がエスプレッソに少しばかりのフォームドミルク(泡立てた牛乳)を加えたおしゃれな飲み物だと知った。

 

カフェ・モカ」と言うのがエスプレッソにチョコレートの風味を加えたものだと知ったのもスタバのおかげだった。

 

あと5年もしたら、田舎のおばあさんが「ダークモカチップフラペチーノを1つ。」とか、舌を噛みそうなメニューを平然と注文しているのだろうか…

 

いや、待て。パスタやピッツァの苦い経験もある。

 

あのジローラモがキャラメル・マキアートをペロペロしている映像が、どうしても筆者の頭には浮かんでこない。

 

エスプレッソの生まれた国イタリアでは、本当にこんな飲み方をしているのだろうか?

 

イタリア人の友人に聞いてみた。 

イタリア人のエスプレッソはチョコレート

「う〜ん。バールで普通のエスプレッソをくいっと飲んでる人の方が多いかな…」

 

 

彼によると、イタリアではあんまりコテコテといろんな物をエスプレッソに混ぜて飲んだりしないらしい。

 

だが一方で、あの苦いエスプレッソをブラックでちびちび飲んでいる日本人も奇異に映るらしい。

 

どうもイタリアでは、日本やアメリカのように喫茶店でゆっくりコーヒーを飲みながら優雅な時間を過ごすと言った習慣はあまりなく、昼休みの後などに、スプーン1杯の砂糖を入れたエスプレッソをくいっとあおるとのこと。

 

彼の話を総合すると、イタリア人におけるエスプレッソは、日本人が愛してやまない「喫茶店的コーヒー」とは別物で、感覚的には「一切れのチョコレートをつまむ」というのに近いようだ。

 

チョコにはミルクチョコやビターなチョコがなどさまざまな種類がある。

 

しかし糖分がまったく入っていないカカオ100%のチョコを食べる人はいないから、苦いエスプレッソをブラックで飲む日本人は奇異に映るらしい。

 

エスプレッソバーは、日本で言うところの「ジューススタンド」ならぬ「チョコスタンド」と言ったかんじなのだろう。

 

モカとエスプレッソは別物です

「イタリアでモカって言ったらカフェ・モカより『モカ・コーヒー』の方が一般的かな…」

 

モカ・コーヒー」。なんだそりゃ?

 

どうもコーヒー豆の種類のことではないようだが…

 

彼によると、「エスプレッソ」とはお店にある巨大なエスプレッソマシンで高い圧力をかけて抽出したもののみを指し、一般家庭で「マキネッタ」と呼ばれる機械で抽出したものを「モカ・コーヒー」と呼んでいるらしい。

 

9〜10気圧で一気に抽出するエスプレッソマシンとガスコンロに直火でかけるマキネッタでは、その濃度もクレマ(つまりはエスプレッソの表面の泡立ち)も違うが、イタリア人は普段使いの家庭で飲むモカ・コーヒーとお店で飲むエスプレッソを割り切って飲み分けている。

 

 

「イタリアでもエスプレッソマシンがある家庭はそんなにないよ。マキネッタならどんな家にも絶対あるけどね。」

 

 

おおっ…イタリア文化に疎い極東の田舎者が、背伸びしてネスプレッソやデロンギの家庭用エスプレッソマシンを物色している場合じゃなかった。

 

基本の「モカ・コーヒー」を知らずしてエスプレッソを語るなかれ。

 

いそぎイタリア人の「急須」たるマキネッタを購入してみた。

イタリア人の急須 モカエキスプレス

 マキネッタの定番といえば「ビアレッティ 直火式 モカエキスプレス」。

 

ニューヨーク近代美術館(MOMA)の永久展示品にも選ばれている、そのなんとも名状しがたいフォルムと、ひげおじさんのトレードマーク。

 

何に使う道具なのか正確には知らずとも、一度はどこかでお目にかかっているはず。

 

「イタリアの全家庭にある」とイタリア人が豪語するだけあって、お値段も2カップ用で3,148円と極めて庶民的。

 

モカエキスプレスは基本的に同じフォルムで1カップ用から18カップ用まで全8種類が用意されている。

 

モカエキスプレスのお約束の相棒といえば、「illy(イリー) エスプレッソ粉 モカ 250g」(1,418円 税込)。

 

Amazonでは商品名に「エスプレッソ粉」と表記されているが、イリーによれば、通常のエスプレッソ用よりわずかに粗挽きで、モカ・コーヒー専用にブレンドされたコーヒー粉とのこと。

 

さっそくモカ・コーヒーを作ってみよう。

サイズはキュート 構造はシンプル

 購入したモカエキスプレスは2人用だが、箱を開けた第一印象は「ちいさっ!」。

 

2人用で約100cc。エスプレッソカップに50ccずつだから、こんなものなのかな。

 

おもちゃのように可愛らしいサイズで、インテリア小物としても合格点なキュートさ。

 

本体上下をねじると3つの部分に分解できる。

 

左から水を入れる「ボイラー部分」、コーヒー粉を入れフィルターとして機能する「バスケット部分」、そして抽出されたモカコーヒーが貯まる「サーバー部分」。

 

ボイラー部分の水が加熱されるとバスケット部分のコーヒー粉を通過して、噴水のようにサーバー部分に溢れ出るという、ちょうどコーヒーサイフォンの上下が逆さになったような原理らしい。

エスプレッソ用極細挽きはNG

 まずボイラー部分に水を入れる。分量は「安全弁」のすぐ下まで。

 

次にコーヒー粉をスプーンでバスケット部分に投入するんだけど、これがけっこうムズい。

 

どうやっても周りに粉をこぼしてしまう。

 

メーカー推奨値は「バスケットすりきり一杯」なのだが、バスケットのふちやボイラーのネジ部分に粉が付いていてはいけないとも。

 

バスケットのふちなどに粉がついていると、容器が密閉されず、お湯や蒸気が漏れてしまうからだとか。

 

バスケットのふちの粉をきれいに拭き取り、かつ「すりきり一杯」はかなり難易度が高いので、8〜9分目にした。

 

ここらへんも、8分目の人もいれば、すりきり一杯の人もいるというお好みの範疇らしい。

 

ここで注意するポイントは、エスプレッソ用の極細挽きの粉を使わないこと。

 

挽き方が細かすぎるとフィルターの目詰まりの原因になってしまうのだそうだ。

コンロに乗らない時は金網かアダプターで

 ボイラー部分にコーヒー粉を詰めたバスケットをセットしたら、サーバー部分と連結させる。

 

この時、大切なのは、サーバー部分とのネジはけっこう固く閉めること。

 

ここが緩いとお湯などが漏れる原因になる。

 

そしてガスコンロへ。我が家にはかなり小さい火口のコンロがあるからうまく乗ったが、コンロの種類によってはモカエキスプレスが小さすぎてうまく乗らないなんてことも。

 

その場合は、魚やお餅を焼く金網の上に乗せるか、マキネッタのための「イルサ ガスバーナープレートφ12cm エスプレッソメーカー用アダプター」なんて製品もある。

 

ガスコンロでも電気コンロでもOKだが、当然ながらアルミ製のモカエキスプレスはIH対応不可ですのでご注意を。

火から下ろすタイミングはさまざま

 火力は、モカエキスプレスの外周からほのおがはみ出ないように、なにしろ弱火で。

 

2カップ用を我が家のコンロにかけたところ、点火から2分40秒後にサーバー部分のノズルから抽出されたモカコーヒーが流れ始めた。

 

撮影のために今回はフタを開けているが、モカコーヒーがはねることもあるので、通常はフタをしたままで加熱する方が安全。

 

さてこの後、しばらく経つと(我が家の場合は流れ始めから1分20秒後)「ボコボコ」という最後の抽出音がして、すべてが抽出し終わるとまた静かになる。

 

ここからのやり方が『達人たち』の一言も二言もある千差万別なところ。

 

①ボコボコ音が収まったら火から下ろす。

 

②ボコボコ音が始まったら火から下ろす。(モカエキスプレスの取扱説明書はこのやり方を推奨)

 

③フタを開けたまま加熱し、流れ出しを確認したらフタを閉めて◯◯秒後(容量やコンロによって異なる)、ボコボコ音が聞こえる前に火から下ろす。

 

…etc.

 

つまりはハンドドリップのコーヒー で、「ドリップした最後の一滴は雑味が混ざるのでカップに落としてはいけない」というのと同じで、豆(粉)によって最後の雑味や苦味を入れないためにボコボコ音前後のよきタイミングで抽出をストップしようということ。

 

ぜひとも各自、「最良のタイミング」を見つけて「家庭の味」を作ってください。

2人用でも3〜4カップ用をおススメします

 今回は撮影のためにフタを開けていたので、ボコボコしそうな直前のタイミングで火から下ろした結果が、この写真。

 

 

えっ!これしか取れないの…

 

 

50ccずつ2カップ分取れる予定だったのに、せいぜい一杯分。(ちなみにボコボコ音まで火を止めなくてもカップなみなみ一杯分だった)とても2人用とは言えない分量だ。 

 

と言うことで、たとえ「2人使い」する場合でも、3カップ用もしくは4カップ用の購入をおススメします。

 

そしてとにかくひとくち。人生初のモカコーヒー体験。

 

 

うん。すごく濃いコーヒーだ…

 

 

たしかにエスプレッソとは違うけど、ほっとする美味しさがある。

 

なんだか今、アドリア海の風がテーブルを吹き抜けたような…

 

「最初はアルミ臭くて飲めないから、10杯分ぐらいは先行投資と思って、モカコーヒーを作っては飲まないで捨てろ」、との先達のアドバイスもあったが、なんとか飲める。

 

たしかにうっすら金属っぽい味がするけど、飲めないほどじゃない。(体に良いかは分かりませんが)

 

そして、最後のポイント。

 

 

モカエキスプレスは水洗いのみ。洗剤で洗ってはいけません。

 

 

何回もコーヒーを抽出するに従ってコーヒーの油脂分が表面をコーティングし、このアルミ臭さを減らしてくれるから、洗剤などで油脂分を取り除いてはいけないそうだ。

 

「衛生的」とはお世辞にも言えないが、「モカコーヒーこそが美味しいモカコーヒーを抽出するマキネッタを育てる」とのこと。

 

それから「細挽き」の粉は細かくて、そのまま流し台に捨ててしまうと排水口のストッキングを簡単に透過してしまう。

 

排水口の目詰まりにはくれぐれもご用心を。

 

などなど注意点も盛りだくさんで、イタリア急須を使い込んで、「本当の家庭の味」を知るには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 

 

すべての道はローマに通ず。しかしその道はいまだ遥か遠い…

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