宇宙

禁断の宇宙食 焼きたてのパンをISSで食べる日が来る?

 米が主食の日本人にはピンとこないが、欧米人の食事にパンは必需品。国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する飛行士が、宇宙食にパンの持ち込みを禁じられているのは、我々日本人が白米を食べられなるのと同じくらいツライのだ。この状況を打開しようと、ドイツのプロジェクトチームが今、宇宙で焼きたてのパンを作る技術の開発を急いでいる。5月30日から6月1日にかけて英国マンチェスターで開かれた宇宙会議で明らかになった。

 

 故郷を離れれば離れるほど、時折ふと、猛烈にふるさとの味が恋しくなる。まして地球から400キロ上空の宇宙を飛ぶ国際宇宙ステーションならなおさらだ。宇宙食に求められる条件は厳しい。保存性、栄養価、匂いはもちろんのこと、乗組員の生命維持や研究活動に必要な数多くの精密機器を備えるステーション内に飛び散ったり、後片付けに手間がかかる食品などもってのほか。

 

 米航空宇宙局(NASA)によると、宇宙で初めてサンドイッチを食べたのは、1965年に打ち上げられたジェミニ3号に乗り込んだジョン・ヤング飛行士。ヤングさんはジェミニ計画、アポロ計画、スペースシャトル計画の全てを経験している偉大なパイロットだが、当時の味気ない宇宙食への不満から、内緒で船内に牛肉サンドウィッチを持ち込んだことでも知られる。

 

 この行為は当時、ボロボロ崩れたパンが無重力空間で飛び散って、電気系統パネルに挟まって火災を引き起こしたり、宇宙飛行士の目に突き刺さったりしかねないとして猛批判を浴び、以後、宇宙船内でのパン食は禁止され、代用食としてすりつぶしたトウモロコシの粉を薄焼きしたトルティーヤが採用されている(とはいえ、この暴挙がその後の宇宙食の味の見直しにつながったのだから、宇宙飛行士はヤングさんに感謝しなければならない)。

 

 しかし、キリスト教徒にとって「主の肉体」を意味するパン無しの生活は耐えられないという訳で、世界屈指のパン大国であるドイツの科学者とエンジニアが団結し、ブレーメンで「BAKE IN SPACE」という開発プロジェクトチームを立ち上げた。文字通り、「宇宙でパンを焼こう!」という意味だ。

 

 創業者のセバスチャン・マルクCEOによると、チームは現在、欧州宇宙機関(ESA)や食品科学者と協力して、パン粉がポロポロと飛び散らない生地とベーキング技術の開発研究を進めている。そういったパン生地は、弾力があって噛みにくいのが最大の問題となるため、崩れにくくサクサクした食感を両立させる特殊なオーブンの製造を考えついた。

 

 もちろん、宇宙ステーションでは電力に限りがあるため、一般的なオーブンの電力消費量の10分の1程度の250ワットしか使えないし、温度が45℃以上に上がるのも厳禁と、課題は山積み。そこでオーブン庫内の圧力を下げて低温で焼き上げる真空ベーキング技術を検討。この技術が実現できれば、一般的な方法で焼いたパンよりもフワフワの食感が期待できるという。

 

 まずは2018年5月にISSを目指す欧州宇宙機関の飛行士アレクサンダー・ゲルスト飛行士が、地球で生焼けにした半生状態のパンを持ち込み、宇宙ステーションで完成させる初めてのミッションに挑む。

 

「香ばしい焼きたてパンを宇宙で食べられる日が来るなんて、夢のようです。宇宙飛行士の心と体にきっと活力を与えられますよ!」この研究に寄せられる期待は、オーブンの中のパンのように膨らむばかり。

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