テクノロジー

眼球を失った男 小型カメラを瞳にし サイボーグめざす カナダ

 人工知能(AI)技術が進化する反面、我々人間もサイボーグに近づく技術が開発されつつあるというショッキングなニュースが飛び込んできた。事故で片目を失ったカナダ人の男性は現在、ビデオカメラ機能を備えた人工眼球で生活しているというのだからオドロキだ。

 

  この男性は、ドキュメンタリー映画監督のロブ・スペンス氏。子供の頃に誤って右目を銃で撃った後遺症で、2007年に眼球摘出手術を受けたスペンス監督は当初、無事な方の左目でものを見ていたが、奥行きや立体感がとらえにくく、撮影にも支障があったことから、カメラ付きの人工眼球のアイディアを思いついた。

 

 眼科医やエンジニア、複数のカメラメーカーに相談するなかで、超小型のワイヤレスカメラと電波を飛ばすトランスミッター、バッテリなどの部品を取り付けた人工義眼の開発にこぎつけた。

 

 2008年にできた試作品1号は、視神経とつながっていないので、見た情報を脳の視覚野で処理することはできないが、その代わりに彼が見たものをパソコンのモニター上に映し出し、インターネットを通じて世界中の人と共有することが可能だ。

 

 スペンス監督によると、カメラの稼働時間は約30分。バッテリーが切れたら充電の必要があるが、技術の進歩で将来的にはこうした問題もクリアしていこうとしている。

 

 スペンス監督の目下の悩みは、肖像権の問題。カメラにはLEDライトが仕込まれていて、撮影中は赤いランプが点灯するが、知らない間に撮影されることで、他者のプライバシーを侵害する可能性がある。「失った眼の代わりを求める私自身の権利とかち合うことになります。慎重な議論が必要です」と監督。

 

 瞳(eye)とサイボーグを足して「アイ・ボーグ」と名付けられたこのプロジェクトは、今月10日、カナダ・トロントで開かれた最先端技術が集められた「フューチャー・ワールド展」で公開され、注目を集めた。

 

 英国のレディング大学では、人工頭脳研究の第一人者であるケビン・ワーウィック教授が、左腕の神経繊維に電極を埋め込んでサイボーグになる実験を行なっているほか、生まれつき色覚に異常があるアーティスト、ニール・ハービソンさんは、頭蓋骨に埋め込んだセンサーで、音に変換した色を「聞いて」いる。サイボーグ技術は私たちの暮らしを豊かにする可能性に満ちている。

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