感染症

皮膚を食い破り侵入する恐怖の糞線虫 47歳男性の全身に広がる ラオス

 沖縄県や奄美大島に生息する「ストロンギロイデス」と呼ばれる寄生虫をご存知だろうか?大きさは1ミリから最大で1メートルにも達し、宿主の免疫力が弱まると急激に増殖して激痛を引き起こす。感染すれば致死率9割という恐怖の寄生虫の増殖で、網状の紫斑が全身に広がったラオス人男性が奇跡的な回復を遂げた。

 

 臨床医学誌『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に先月掲載された報告書によると、米テキサス州の健康科学センターに、皮膚と筋肉に炎症が起きる病気で副腎皮質ホルモンの服用を続けている47歳のラオス人男性が運び込まれた。

 

 患者は発熱のほか、下血と腹痛を訴えており、2週間近く皮膚の発疹が消えなかった。1カ月前には、痰に血が混じる肺胞出血で入院していたが、原因はわからず、副腎皮質ホルモンのグルココルチコイドを投与されて症状が和らぎ、退院したばかりだった。 

 

 男性を診察したテキサス大学サンアントニオ校のハイディ・マクドナルド医師によると、患者の脈は速く、腹から男性器、大腿部までの広範囲にわたって網状の紫斑が広がっていた。

 

 呼吸困難に陥った患者の気管にチューブを挿入し、気管支や肺の中を内視鏡で検査した結果、ウネウネとした糸状の寄生虫がうごめいているのを発見。そこで発疹部分の皮膚組織を採取して、顕微鏡で調べた結果、表皮の下の真皮層に、複数のストロンギロイデスの幼虫がいることがわかった。

 

 血液検査の結果、ストロンギロイデスの増殖によって、全身の血液に病原菌が広がって炎症が起きていることが判明。菌血症の抗生物質と虫下しを投与した結果、奇跡的に死から免れた。

 

 ストロンギロイデスは日本名を「糞線虫」といい、衛生状態の悪い土壌などに触れたときに、幼虫が皮膚を突き破って体内に入ることで感染する。もともとは熱帯や亜熱帯地域の風土病として知られていたが、米国ではベトナム戦争帰りの軍人の間でも感染報告があり、厚生労働省の検疫所によると、ヨーロッパやオーストラリアなどの先進国でも感染が起こる場合があるという。

 

 ラオスから米国へ移民したこの男性患者のように、感染から数十年過ぎて発症するケースもあることから、感染源の特定は難しい。ワクチンや予防薬はなく、汚水や汚れた土壌は素手や裸足で触れないようにするのが唯一の予防法だ。

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