感染症

集合恐怖は病気への嫌悪が原因 英国の研究「コーヒーの泡もイヤ!」

「トライポフォビア」をご存知だろうか?インターネット上では、俗に「蓮コラ(ージュ)」などと呼ばれるもので、蓮の実や蜂の巣などといった小さな穴が無数に集まったものに対する恐怖や嫌悪感のことを指し、日本だけでなく海外にも一定程度の割合で存在すると言われる。この集合恐怖症を引き起こす理由について、英ケント大学の心理学者が「感染症と寄生虫の進化の歴史と深く結びついている」との見解を示した。

 

 トライポフォビア(Trypophobia)という概念が生まれたのは2005年とわりと最近の出来事だ。インターネットとブログの発展に伴って、果物の種や蜂の巣、スポンジの気泡などデコボコの集合体を皮膚に合成するコラージュを誰もが作れるようになり、見た人に不快感や嫌悪感を抱かせる画像がネット上にあふれるようになった。

 

 英国エセックス大学の脳科学センターの心理学研究チームが最初にこの現象に関する論文を発表。ギリシャ語で「穴」を意味する「trypo」に、恐怖という意味の「phobia」を合体させて名前をつけた。

 

 試しにインターネットで「集合恐怖」とか「蓮コラ」を検索してみると、たくさんのゾッとする画像が出てくる。筆者は眉をしかめるくらいで済んでいるが、症状が深刻な人たちにとっては、体の震えを感じ、冷や汗や動悸、吐き気やパニック障害に陥る人もいるという。そればかりか、合成加工した画像に限らず、パンケーキやコーヒーの表面にできたわずかな気泡を見ても不安になるというのだから同情を禁じ得ない。

 

 ケント大学の心理学者トム・クーパー教授は、英国内でトライポフォビア支援団体に登録している症状を持つ300人余りを対象にした実験を行なった。

 

 トライポフォビア症ではない大学生300人にも同じ16枚の写真を見てもらって比較したところ、いずれの参加者も、天然痘の痘痕(あばた)や丸いすり傷、ダニに刺された傷跡など、身体に関係した写真にはイヤな表情を浮かべた。一方で、壁の穴やハスの実などの写真を見せられても大学生は無反応だったのに対し、トライポフォビア症の人たちは、強い不快感を示し、「ひどいかゆみ」や「皮膚の上を虫か何かがが這い回っているようだ」と訴えたという。

 

 これまでの研究でも、ヘビや高いところなどに感じる恐怖とは違って、感染症を潜在的に避けようと嫌悪感を抱いている可能性があると指摘されてきた。

 

 クーパー教授は、「天然痘やはしか、風疹、ダニやシラミの感染症など、人類の進化の歴史とともに多くの病気が流行してきたが、それらはいずれも皮膚に丸い斑点ができることから、トライポフォビア症はこれらの感染症への潜在的な恐怖を示しているのではないか?」と指摘し、丸いものが集まった画像を見ることが、皮膚感覚を刺激している可能性があると述べている。

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