医療技術

死んだアメフト選手の脳「9割に外傷性疾患」度重なる脳しんとうで…

 米国の国民的スポーツ「プロ・アメリカン・フットボール・リーグ(NFL)」で活躍していた選手ら202人の脳を調べた結果、9割が外傷による脳の疾患を患っていた事実が明らかになった。外傷を受けてから数年が経って、記憶力の低下や抑うつ状態、錯乱などといった症状を引き起こす病気で、これだけまとまった数の選手が脳疾患を患っていた事実が明らかになったことは今回が初めて。

 

 研究のきっかけになったのは2002年、殿堂入りも果たしたNFL選手の元スター選手、マイク・ウェブスター氏が、引退から11年後に、50歳の若さで死亡した事件にさかのぼる。

 

 ウェブスター氏は晩年、奇行を繰り返し、家族が知らない間に散財を繰り返すうち、記憶障害や苛立ち、怒りっぽさ、うつなどの症状が現れ、妻に去られてホームレスとなり、死亡したニュースは、全米のファンを大いに悲しませた。

 

 検視した医師は、晩年の認知症のような症状を知って、脳の神経細胞を調べた結果、「慢性外傷性脳症(CTE)」を患っていた事実を突き止めた。専門誌に結果を発表したが、NFLは内容を全面的に否定し、論文を反故するよう要請。NFLの専門委員会を相手に戦う医師の姿は『コンカッション(=脳しんとう)』という映画にもなり、広く注目されることになった。

 

 ボストン大学CTEセンターが7月25日に国際医学誌「JAMAジャーナル」に発表した論文によると、研究チームは、2014年までに亡くなった元プロ選手を含むアメフト選手202人の家族から、死後の脳を献体してもらって、病理診断を実施。

 

 その結果、87%に当たる177人の脳で、CTEを患っていた痕跡を確認。特に、NFLで活躍していた元選手111人のうち、110人では進行が最も進んだ重度の症状だったという。

 脳の検査と同時に、選手の家族や友人に聞き取り調査を実施したところ、重症の選手のほとんどが生前に、衝動的な行動や気分の移り変わりや注意力欠陥、言語上の問題を抱え、抑うつ症状で苦しんでいたこともわかった。その症状は時間が経つに連れて、どんどん悪くなっていったという。

 

 調査の対象としたのは、クオーターバックやラインマン、キッカーといったさまざまなポジションで、プロ以外は、高校や大学時代に平均15年以上のプレー経験があった。

 

 「慢性外傷性脳症(CTE)」は、脳しんとうなど、繰り返し衝撃を受けることで、神経細胞がもつれて破壊が進む疾患で、現代医学では、死後の病理学的検査でしか判断されない。 アメフト以外にも、サッカーやレスリング、野球など接触の多いスポーツ全般でリスクが高く、ボクシングなどの格闘技では「パンチドランカー現象」としても知られている。アルツハイマー病やパーキンソン病など認知症によく似た症状から、診断は難しいと言われる。

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