歴史

ヴェスビオ山 噴火前からポンペイ市民は中毒を起こしていた?驚きの事実

 1900年以上前のヴェスビオ山の巨大噴火で、一瞬にして消失した伊ナポリ近郊のポンペイ。火砕流が埋め尽くした古代都市の市民は、亡くなったときのままの状態で遺体が見つかっているが、最近の研究で、噴火が起こる以前から、市民は水道に含まれた毒で中毒を起こしていた可能性が明らかになった。

 

 国際的な毒物専門誌『Toxicology Letters』に今月5日、歴史を揺るがす衝撃的な調査報告が掲載された。イタリアやフランスなどの国際研究チームは、ポンペイの遺跡の住居跡に残っていた鉛で作られた給水管の断片を分析した結果、毒性が強い金属元素アンチモン(Sb)を検出した。

 

 古代ローマでは紀元前312年ごろから、帝国全域に水道が建設され、数世紀にわたって都市や工場に水を供給し続けた。当時の水道管には鉛が使われていたが、鉛は他の金属に比べて腐食しにくい半面、鉛イオンとして溶け出した水を長期間飲んでいると、体内に蓄積された鉛が中毒を引き起こすことがある。

 

 日本でも1980年代までは鉛管の水道管が使われていたが、1995年に全面禁止されている。鉛中毒は、腎臓や末梢神経に影響し、脳卒中を引き起こしたり、乳幼児の場合は知能指数の低下など、発達面でさまざまな悪影響を及ぼすと指摘されている。

 

 18世紀初頭以来、古代ローマの都市で使われていた水道管が原因で、慢性的な鉛中毒者を生み出し、それが帝国滅亡を引き起こしたと主張する学説がある。近年では、水道管内部に分厚く沈着したカルシウム成分によって、流れる水が鉛と触れずに済んだ点と、ローマの水道は常時垂れ流しだったために、鉛と水の接触時間は短かったという指摘によって、先の学説は否定されつつある。

 

 しかし今回、鉛よりもさらに毒性が強いアンチモンが3680マイクログラム検出された。研究チームによると、飲み水に含まれる濃度としては異常なほど高く、毎日飲んでいれば下痢や嘔吐は止まらなくなり、脱水症や肝臓や腎臓の病気を引き起こし、深刻な場合は心停止につながる危険性があるという。

 

 研究チームによると、アンチモンは火山近くの地下水で作られることが多く、ヴェスビオ山に近いポンペイは、他の古代都市よりも水道水のアンチモン濃度が高かった可能性があると指摘している。

 

 今回の研究では、ポンペイ遺跡に残っている水道管のごく一部しか分析していないため、今後はローマ帝国全体を調査対象とするとともに、古代人の骨や歯の化石を調べて、体内に蓄積していたアンチモンについても明らかにしていくとしている。

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