原子力

欧州全土を覆った放射能の雲 発生源はロシア 仏研究所が指摘

 

 9月下旬から10月にかけて、ヨーロッパ全土で大気中から放射性物質が検出される事件があった。フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は「ルテニウム106」と特定し、発生源の特定を進めていたが、ロシア気象庁は21日、ウラル山脈南部を流れる川で、高濃度のルテニウム106を検出し、原因は放射性物質処理施設の工場廃水である可能性が高いと発表した。

 

 この問題は、今年9月27日から10月13日にかけて、フィンランドやオーストリア、スイスをはじめとするヨーロッパの14カ国で、微量の放射性ルテニウム106が大気中のモニタリングで検出されたもの。

 

 ルテニウム106は、東京電力福島原発事故でも放出された放射性物質で、セシウム137やストロンチウムに比べると半減期は短く、約1年余り。フランス放射線防護原子力安全研究所は今月9日、「すでにヨーロッパ全土では大気中の放射性物質は検出されなくなり、健康や環境に影響をもたらさない」と発表している。

 

 そのうえで、ヨーロッパ上空で検出されたルテニウム106の濃度レベルを地図で表し、「最も濃度が高かったのは、ロシアを南北に縦断するウラル山脈とボルガ川に挟まれたエリアだ」として、ロシア西部が発生源である可能性を指摘していた。

 

 問題発生以来、ロシア政府は一貫として「原子力事故の可能性」を否定してきたが、今月21日、同国気象庁が気象観測データを発表し、「9月下旬から10月半ばにかけて、ウラル山脈周辺の川や貯水池で極めて高い放射性物質による汚染を確認した」と認めた。

 

 報告によると、ウラル山脈の東に位置する都市チェリャビンスクを流れるミアス川や貯水池などで高濃度のルテニウム106が検出され、チェリャビンスク近郊にある州政府が運営に関わる放射性物質の再処理施設からの工場廃水が、下水処理場に流出した可能性が高いとしている。

 

 ロシア気象庁によると、9月下旬から10月初めにかけては、西シベリアの中心にあった高気圧の影響で、カスピ海から地中海にかけて放射性物質を含む大気が移動し、ヨーロッパ各地に運ばれたと見られると言う。

 

 一方、発生源と見られるチェリャビンスクの工場を運営するロシア国営の原子力企業ロスアトム(ROSATOM)の責任者マキシム・ヤコヴェンコ氏は21日、「ルテニウム106はロシアだけでなく、ポーランドやブルガリア、ルーマニアでも検出されており、その濃度は基準値よりも数千倍低いレベルだったが、ルーマニアの検出濃度はロシアより2倍高かった」とコメントを発表し、同社の関与を全面的に否定している。

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