医療技術

紫の光「バイオレットライト」近視の進行が抑制される 慶応大

 日本人に多い近視。世界的に見ても増加傾向にあり、30年後には世界の近視人口が50億人近くに達すると予測されている。慶応義塾大学医学部の研究チームは、レンズを使った実験で「バイオレットライト」と呼ばれる紫色の光を浴びると、近視の進行が抑制される効果があることを突き止めた。

 

 仕事などでパソコンを使う作業が増えたり、スマートフォンの見過ぎなどが原因で、近視が進むリスクが高くなっている。厚生労働省の調査では、視覚障害1級(失明)になった原因の4番目に、強度近視が挙げられているが、近視の進行を抑制する有効な治療法はない。

 

 慶応大眼科学教室の坪田一男教授や根岸一乃教授らのチームは、「有水晶体眼内レンズ」というレンズを眼の中に挿入する手術を受けた成人の強度近視患者26人に対し、手術後5年間の近視の進行を比較する実験を行なった。

 

 2種類のレンズを使った実験の結果、バイオレットライトを通過するレンズを挿入した15人では、近視が進行している目安となる眼の奥行き(眼軸長)の伸びが、距離にして約4分の1にとどまり、近視の進行が抑制される効果があると裏付けられた。

 

 バイオレットライトとは、紫外線の手前にあたる波長が360〜400ナノメートル(nm)の領域の可視光線で、太陽光には含まれているが、蛍光灯やLEDライトにはほとんど含まれていない。

 

 研究チームはすでに、コンタクトレンズで視力矯正をしている13〜18歳までの子供を対象に同様の実験を行なっており、バイオレットライトが目に入るレンズを装着している子供の方が眼軸長の伸びが少なく、近視の進行抑制に効果があることを発表。今回は成人の強度近視患者を対象に比較実験を行なった。

 

 遺伝子解析の結果、バイオレットライトが目に入ると、近視の進行を抑制すると考えられている遺伝子「EGR1」が活性化され、眼軸長の伸びが少なくなるという。研究チームは今後、さらに研究を進めて産学連携で製品開発を行いながら、将来的には眼軸長の伸びを止められる治療法の開発に結びつけたいと期待を寄せている。

 

 なおこの研究成果は、英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載された。

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