医療技術

世界から「水虫」が消える日 白癬菌の弱点解明「不気味な顕微鏡画像」

 まずは、電子顕微鏡で観察したこの写真をご覧いただきたい。足の裏や爪などで水虫を引き起こす「白癬(はくせん)菌」だ。米国の分子遺伝学の専門家は最近の研究で、「白癬菌は、性的に繁殖する能力を失っている可能性が高い」と指摘し、将来的には地球上から絶滅する日が来るかもしれないと結論づけた。

 

 蒸れやすい革靴を長時間履いている営業マンや、プールやシャワー、温泉の脱衣所など、素足が触れる機会が多い水泳や柔道などの選手に多い水虫菌は、髪の毛や爪、角質などに含まれるケラチンというたんぱく質をエサにしている。

 

 カビの一種である真菌は、ヒトの細胞に付着した胞子から菌糸が伸びて(発芽)、成長と枝分かれを繰り返し、胞子を作りながら増殖していく。胞子には動物と同じようにオス・メスの違いがあり、異なる性別を持つ真菌同士が接合(交配)することで、染色体が混ざり合って多様な胞子が形成されると考えられている。

 

 米科学誌『ジェネティクス(遺伝学)』に先月掲載された論文によると、デューク大学で微生物学と分子遺伝学を研究しているジョセフ・ハイトマン医学博士らは、世界各国から135種類の白癬菌のサンプルを集め、菌の交配方法を観察。

 

 研究チームはシャーレの中で真菌同士が交配しやすいようにさまざまな工夫を行ったが、その結果、135種類のうち134種類が交配せず、99.97%は遺伝子が同じ自身のクローンを再生していることが明らかになった。

 

 菌が無性生殖で増殖を繰り返していくと、遺伝的に多様化できないため、抗生剤が効きにくい薬剤耐性菌に変身するおそれはなく、将来的には地球上から水虫が無くなるかもしれない。朗報だ!と早合点するにはまだ早い。ハイトマン博士は「白癬菌の絶滅には少なくともあと数百万年はかかりますよ」と述べている。

 あなたにオススメの記事