歴史

世界最古のミイラ男・アイスマン 殺害前の「最後の晩餐」判明

 イタリアとオーストリアの国境に広がる氷河で、完全な状態で発見された約5300年前の男性ミイラを研究しているチームが、胃の中に残されていた内容物を分析した結果、殺害される直前に食べたものは、現代では考えられないほど脂肪分が多く、高カロリーだったことを明らかにした。

 

 アイスマンは、1991年に海抜3210メートルのアルプス氷河のなかで見つかった青銅器時代より古い銅器時代のミイラで、これまでに行ったゲノム(全遺伝子情報)解読によって、生前の姿は身長160センチ、体重50キロ、年齢47歳前後の筋肉質体型で、瞳の色は茶色だったことが判明している。

 

 伊ボルツァーノ欧州アカデミー(EURAC)のアイスマン研究チームは今月12日、生物学誌『カレント・バイオロジー(Current Biology)』にアイスマンの胃の内容物を詳しく分析した結果を発表した。

 

 アイスマンの生前の暮らしについては、胃壁のDNA検査からピロリ菌に感染していたことや、動脈硬化や関節炎、消化不良などの持病があったほか、生殖能力が無かった可能性も明らかになっている。しかし、ミイラ化によって胃袋が通常の位置になかったことから、死ぬ直前に食べた「最後の晩餐」のメニューに関する研究は進んでいなかったという。

 

 分析の結果、アイスマンの最後の食事は、死ぬ30分から2時間前に摂取したもので、炭水化物、タンパク質、脂肪の3つのバランスが取れたメニューだった。研究者が驚いたのは、脂肪分が内容物の50%と現代では考えられないくらい高脂肪食だったことだ。

 

 この脂肪分の正体は、アルプス山脈に生息する野生のヤギ「アイベックス」を乾燥させた干し肉で、胃の中の保存状態が良かったため、60℃未満の低い加熱温度で調理されたこともわかった。ほかには、アカシカの肉や現代の小麦の祖先だと考えられているヒトツブコムギがすり潰されていない状態で発見されているほか、シダ植物の成分も含まれていた。

 

 シダ植物の一種であるワラビは、日本では食べる習慣があるが、毒があるためアク抜きや塩漬けなどで無毒化させる必要がある。アイスマンがなぜ毒を食べていたのかについては解明されていないが、古代病理学者のアルベルト・ツィンク氏は「アイスマンはピロリ菌による胃痛持ちだったので、薬代わりに使っていた可能性もあるし、食べ物をシダの葉に包んで運んでいたのかもしれない」と推理している。

 

 発見以来、27年間に及ぶ研究でアイスマンは亡くなる数日前に誰かと争って右手にケガをし、その後、アルプス山中で休んでいた際、背後から奇襲攻撃を仕掛けられて絶命した古代の殺人事件の被害者であることが明らかになっている。

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