歴史

防災歳時記9月28日 狂犬病は昔の病気? 世界狂犬病デー

   9月28日は「世界狂犬病デー」だ。


   狂犬病ワクチンを開発したフランスの細菌学者、ルイ・パスツールが今から118年前の今日、亡くなったことにちなんでいる。


   狂犬病とは、狂犬病ウイルスによって引き起こされる感染症で、すべての哺乳類が感染する。人の場合は感染した犬などに咬まれることで唾液からうつり、発症してしまうとほぼ100%死に至る恐ろしい病だ。


   発症までの潜伏期間が2週間から最長半年と長いため、適切な治療を施せば助かるが、ワクチンは高価で、例えばアフリカでは平均月収の2ヶ月弱分に相当する。途上国に行き渡っていないのが現状で、WHOによると、世界の狂犬病による死者数は年間5万5000人と推定され、その大半がアジアとアフリカという。

   では、日本ではどうか。国内におけるピークは1940年代で、1949年には74例の感染報告があった。その後、国は1950年に「狂犬病予防法」を制定。犬に年1回の予防注射を受けさせるよう飼い主に義務付けるなど予防対策を徹底し、狂犬病を撲滅した。………かに見える。

 

   確かに、国内での感染例は法制定後、急速に減り、1956年に人と犬、1957年に猫の感染例があったのを最後に発生していない。「狂犬病は昔の病気」「よその国の問題」と感じたとしても無理はないだろう。

 

   しかし、そんな悠長さを吹き飛ばすようなことが2006年に起きた。狂犬病による死者が2人も相次いだのである。

 

    一人は京都の60代男性で、発熱や左手のしびれ、水が飲み込みにくいといった症状に悩まされ、救急外来を受診。点滴でいったんは軽快したものの、「虫が見える」「水が恐くて手が洗えない」「人がそばを通る空気の流れが恐ろしい」といった症状が徐々に増し、再び病院に担ぎ込まれた。

 

   家族に聞いたところ、男性は2ヶ月半前のフィリピン滞在中に犬に左手を咬まれており、狂犬病と判明。その頃には既に男性はベッドの柵を叩く、看護師に唾を吐きつけるなど興奮状態で、まもなく心肺停止状態に陥り、5日目に亡くなった。

 

   もう一人は横浜の60代男性で、京都の事例同様、マニラ滞在時に犬に咬まれ、2ヶ月ほどの潜伏期間を経て発症、死亡している。 

 

   2つの事例はいずれも海外で感染しており、輸入症例としても1970年以来36年ぶりだった。だが、日本から海外への渡航者は年間1700万人もいる上、アジア圏の「狂犬病清浄国」は日本だけだ。同じ島国である台湾も長らく清浄国だったが、今年7月以降、イタチアナグマや飼い犬から52年ぶりに狂犬病ウイルスが検出されている。


   感染症は「地球上から撲滅」されない限り、決して無縁にはならない。日本だって狂犬病の"安全圏"ではない、と肝に銘じたいところである。

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