歴史

防災歳時記11月7日 美術館というビジネス

 今から84年前、1929年の今日11月7日、ニューヨーク近代美術館が誕生した。

 

 この画期的なアバンギャルド(前衛芸術)専門の美術館は、J.D.ロックフェラー2世夫人ら3人の「お金持ちの奥さま」によって発案されたが、後に建築、インダストリアルデザイン、ポスター、写真などにその領域を広げ、「芸術」を「より生活に身近なもの」にした功績は大きい。

 

 ところで美術館と言えば、実は日本は世界でも有数の「企画展大国」であることをご存知だろうか?

 

 英国に「アート・ニュースペーパー」という美術専門紙があり、毎年3月に「世界展覧会観客動員数」というランキングを発表しているが、日本の企画展は常に世界ランキングトップ5を牛耳っている。

 

 例えば2011年(つまりは2010年の動員数だが)のランキングは以下のとおり。

 

 

第1位 没後400年 特別展「長谷川等伯」 東京国立博物館

第2位 オルセー美術館展2010「ポスト印象派」 国立新美術館

第3位 デザイニング・ザ・リンカーン・メモリアル ワシントン・ナショナル・ギャラリー

第4位 没後400年【特別展覧会】長谷川等伯 京都国立博物館

第5位 没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 国立新美術館

 

 

 フランスのルーブル美術館、MOMAと並みいる強豪を抑え、この年はなんと日本の美術館がトップ5中に4つもランクインしている。

 

 しかし、だからと言って、日本が「美術大国」などと思ってもらっては困る。

 一方で一昨年(2011年)の年間動員数ランキングを見てみよう。

 

 

第1位 ルーブル美術館 仏・パリ 972万人

第2位 メトロポリタン美術館 米・ニューヨーク 612万人

第3位 大英博物館 英・ロンドン 558万人

第4位 テート・モダン 英・ロンドン 530万人

第5位 ナショナル・ギャラリー 英・ロンドン 516万人

 

 

 日本の美術館は、といえば、アジアや南米の美術館にも大きく差をつけられ、毎年20位前後をうろうろしている。

 

 この理由は何か?と問われれば、よくあげられる理由は以下の2つ。

 

(1)日本人は、美術や芸術を身近に感じたいのではなく、「イベント観光」をしているだけ。

 

(2)日本は海外の美術館・博物館に比べて収蔵品が貧弱なため、「常設展」は不人気で、有名美術館から誰でも知っている名作を集め「企画展」を開くことに活路を見出すしかない。

 

 確かにルーブル美術館の「モナリザ(ダヴィンチ)」やメトロポリタン美術館の「糸杉(ゴッホ)」のような作品は?と問われれば、そうした世界の超一流美術館と比べ、日本の美術館のコレクションは残念ながら「貧弱」だというのは認めよう。

 

 さらにもう一つ問題なのは、多くの美術館・博物館で、来訪者にアンケートを取ると一番多いのが50歳代で、40歳〜60歳代がかなり多くの割合を占めており、若い人の「美術館離れ」が顕著なこと。

 

 米国などで美術館来訪者の年齢分布をとると、各年齢層がほぼ均等になっているのと対照的だ。

 

 高齢化が進んでいるとはいえ、そして日本の美術館・博物館の「お宝」といえば仏教芸術が多いとはいえ、芸術なんて本来は「若者の専売特許」だったんじゃないか?

 

 日本人がロンドンに行けば「大英博物館」、パリに行けば「ルーブル美術館」、ニューヨークなら「MOMA」となるのが「観光旅行の定石?」だが、これは何も日本人に限らない。

 

 集客力のある美術館・博物館はどこの国でも重要な「観光資源」だが、わが国の美術館・博物館の一館あたりの来訪者数は年々減少傾向にある。

 

 そして日本のお家芸だった「企画展」も2011年には「エッシャーその魔法の世界」で新興ブラジル リオデジャネイロのブラジル銀行文化センター(CCBB)にトップの座を奪われた。(ちなみにCCBBは年間動員数=つまり常設展の動員数でははるかに日本の美術館に水をあけている)

 

 2012年は、あの「真珠の耳飾りの少女」で有名な「マウリッツハイス美術館展」でかろうじて1位の座に復活したが、CCBBが「アマゾン・現代性の循環」で2位にぴったり付けている。

 

 2020年には東京五輪で多くの海外からの観光客が訪れるだろうし、そして安倍政権は「観光立国」を唱える。

 

 この日本が決して「文化的弱小国」だとは思わないが、「美術館ビジネス」でもブラジル始め新興国や、韓国などのアジア諸国にも、日本は遅れをとりつつあるのが現実だ。

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