歴史

防災歳時記11月9日 女優で発明家 へディ・ラマールの生涯

   へディ・ラマール(Hedy Lamarr)という女優をご存知だろうか。


   彼女は今から99年前の1914年の今日11月9日、ウィーンでユダヤ系の両親のもとに生まれた。


   その誕生日にちなんで、ドイツやオーストリア、スイスでは11月9日を「発明家の日」と定めている。


   なぜ、一女優が国の記念日として取り上げられるほどの「発明家」なのか?


   その謎は、彼女の"まるで映画のような"人生を紐解いていくと見えてくる。


   へディは17歳で映画に端役で出演し、わずか2年後、チェコ映画『春の調べ』のヒロイン、エヴァ役に抜擢される(当時の名前は、父の姓を名乗ったへディ・キースラー)。


   性の解放を謳ったこの映画で、へディは年の離れた夫に満足できない若い妻を体当たりで熱演。裸で馬にまたがったり、湖で水浴びしたりするシーンは当時、一大センセーションを巻き起こし、映画は世界各国で賛否両論、検閲の憂き目にあうことになった。

   日本でも公開され、映画評論家の故・淀川長治氏は「自然な映画だからカットしたらいかん、と言うので全裸の姿見せて大変な評判になって。この裸を観に行くんだって飛んでったんですね」と当時を振り返っている。


   映画が話題になったその頃、へディは弾薬工場で働く男と結婚。これが映画さながらにへディをうんざりさせる夫で、彼女のヌードを見せまいと『春の調べ』のプリントを買い占めて回ったり、異常に嫉妬深かった。へディは夫に嫌気が差し、さっさとロンドンに逃げてしまう。


   が、へディはここで意外な"副産物"を手に入れていたのだ。


   結婚生活は退屈なものだったが、技術者である夫から得た「無線」の知識を生かし、1942年、周波数を一定の規則に従って高速に切り替え、送信機と受信機の間で通信を行なう「周波数ホッピングスペクトラム拡散」に関する特許を取得してしまうのである。


   音楽家のジョージ・アンタイルと共にへディが見つけたこの技術は、ノイズに強く、通信を傍受されにくく、現在の携帯電話や無線LANに繋がる発明とされている。今や誰しもが持っている通信機器の基礎を築いたと言えるのだ。


   へディはロンドンでハリウッドの辣腕プロデューサー、ルイス・B・メイヤーと出会い、アメリカに渡る。ラマールと名を改め、セシル・B・デミル監督の『サムソンとデリラ』(1949年)などに出演した。


   数々の男性と浮名を流し、次から次へと結婚してはわずか数年で離婚している。その数、6回。こんな奔放で、しかもアメリカで活躍した彼女を、発明の記念日にするドイツやオーストリアはなんとも"粋"と言えるだろうか。


   へディは世紀の変わる直前まで長生きし、2000年1月19日に亡くなっている。85歳だった。

 

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