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「トラウマ体験」は遺伝する マウス実験で証明

 「経験は遺伝しない

 

 遺伝子情報は、DNAに書き込まれた4種類の塩基の配列で決まると学校で教わった。

 

 だが経験により、この塩基配列が変化することはないから経験は遺伝しない、「細胞に刻み込まれた記憶」なんてあり得ないんだと思われてきた。

 

 だとしたら、なぜ生まれつき「高所恐怖症の人」や「水が怖いから泳げない人」や「食べ物の好き嫌い」のような、合理的説明が難しい個体差が生まれるのか?

 

 この疑問を解くカギになるかもしれない興味深い米国の研究チームによる論文が2日、科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版に掲載された。

 

 オスのマウスの足に電気ショックを与えながら、特定の臭いをかがせ、この臭いを恐れるように訓練する。

 

 このオスの子どもと孫に、同じ臭いをかがせると、ひどくおびえた様子を見せた。人工授精により「父親の教育」という要素を排除してもだ。

 

 このオスの精子を調べると、嗅覚をコントロールする遺伝子情報に、「メチル化」と呼ばれる変化が起きていた。

 最近『エピジェネティクス』と呼ばれる研究領域がある。

 

 これまでのDNA塩基配列では説明のつかない個体差について、本当は塩基配列の他に、経験を細胞に刻み込む別の遺伝方法があるのではないか?と考えて、そのメカニズムを解き明かす研究領域だ。

 

 そして、このエピジェネティクスが注目している、「別の遺伝の仕組み」の有力候補が、オスのマウスの精子に見られたような「DNAのメチル化」という現象。

 

 これからの研究分野なだけに、まだまだ検証しなければならないことは山ほどあるが、今回の実験を見る限り、身体的な「形質」だけでなく、「経験、もしくは記憶」(少なくとも何度も味わうようなひどいトラウマ体験)も後世に遺伝するらしい。

 

(いや、正確には経験そのものが遺伝するのではなく、「脳細胞の変化という形質」として遺伝するのだが)

 

 生まれつき高所恐怖症の人や、水が怖い人は、ご先祖にひどいトラウマ体験があったのかもしれない。

 

 もしかしたらトラウマだけでなく、「ひどく楽しい記憶」も遺伝するのかもしれない。

 

 例えば「夕日を見るとなぜか懐かしい気持ちになる」なんて人は、先祖代々、夕方になると自分を待っている温かい家庭に恵まれた家系に育ったのかもしれない。

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