歴史
Loading

防災歳時記1月23日 噴火と領海紛争とTPPと

 世界で戦争が起きる理由はさまざまだ。

 

 英国とアイスランドの紛争の原因は、「鱈(タラ)」だった。

 

 20世紀初頭、欧州最貧国の地位にあったアイスランドは、英国からトロール漁船を購入した結果、豊富なタラなどの水産資源で経済を復興させた。

 

 それから50有余年、アイスランドは1958年に、自国の領海を、それまでの4海里から12海里に拡大すると一方的に決定する。

 

 これで勃発したのが第一次タラ紛争

 

 英国海軍とアイスランド沿岸警備隊は北海で小競り合いを演じたが、結局、英国が12海里を認めて決着した。

 

 その後、1972年に再びアイスランドは漁業専管水域を50海里に拡大すると、これまた一方的に決定。

 

 第二次タラ紛争が勃発した。

 

 そもそもの原因が「タラ」だから、さすがに本格的な砲撃戦にはほとんどならないものの、アイスランド沿岸警備隊は、英国漁船の網を鉤で引っかけて切断する「ネットカッター」で攻撃、このため漁船を英国海軍が護衛するといった小競り合いが続いた。

 そんなさなかの1973年、今から41年前の今日1月23日、アイスランドのヘイマエイ島で、農場に突然、割れ目噴火の火口が開き、噴火が始まった。

 

 いくつかの割れ目噴火は、一つの大きな火口となり、溶岩流は時速数メートルというスピードで島の経済的生命線「漁港」に迫っていった。

 

 戦争までして守っている「貴重な資源」だ。

 

「タラが捕れなくなる」

 

 と言ったかどうかは知らないが、すでに町の3分の1まで迫っていた溶岩流に対し、住民は果敢にも立ち向かうことを決意した。

 

 具体的に何を決意したかって、それは迫り来る溶岩に消防の高圧ホースで海水をかけること。

 そして驚くべきことに、溶岩は島の病院まであと数ヤードというところで本当に止まった。

 

 町は、その3分の1を失ったが、漁港は守られ、島は溶岩流により面積が15%ほど増えた。

 

 アイスランド沿岸警備隊は、戦争をほっぽらかし住民の救助にあたったため、英国漁船は噴火の間だけ、網を切られずに、自由に操業ができた。

 

 しかし、この第二次タラ紛争も、結局、「漁獲高制限をする」と英国が譲歩に追い込まれた。

 

 この3年後には、アイスランドが自国の漁業専管水域を200海里にするとまたもや宣言。

 

 3度目のタラ紛争が勃発するが、欧州自由貿易連合(EFTA)を脱退していた英国は、欧州経済共同体(EEC)からそっぽを向かれ、EEC自体が欧州全域に200海里の排他的経済水域を設定。

 

 いわゆる「はしごを外される」という奴だ。

 

 アイスランド200海里問題で、英国はまたもや妥協を強いられ、同国の漁業は大打撃を被ることになる。

 

 こうしてアイスランドの主張が認められたことで、世界各国はこぞって200海里の排他的経済水域を設定するようになり、結果、遠洋漁業を行なう日本の漁業もダメージを受けることとなった。

 

 環太平洋連携協定(TPP)も色々な問題があるが、「自由貿易の仲間」に入ってないと、思いがけないところで痛い目に遭うこともある、というお話と、遠い北海での紛争によって、日本の漁業までもが、とんだとばっちりにあったというお話。

あなたにオススメの記事