歴史

防災歳時記3月4日 元祖王子と「日本」というファンタジー

 例えば羽生結弦選手が「フィギュア王子」なように、最近は何かに秀でた優雅なイケメンを「◯◯王子」と呼ぶが、その元祖と言えば、この人だろう。

 

 今から620年前、1394年の今日3月4日にポルトガルで生まれた、エンリケ(ヘンリー)航海王子

 

 その名のとおり航海王子は、数々の探検的航海を実施し、「大航海時代の幕開け」をした人物だ。(実際には、自分は一度も船には乗らず、お金を出しただけだが…)

 

 安倍晴明のような陰陽師と京の都に跋扈(ばっこ)する魑魅魍魎(ちみもうりょう)。

 

 平安時代の日本が、そんな世界だったのと同じように、航海王子が生まれた14世紀末から15世紀のヨーロッパも、「勇者と魔王」が戦い、王女を救うゲームの中のようなファンタジーな世界だった。

 

 実際、航海王子は、「ダ・ヴィンチ・コード」などで「キリストの聖杯」を隠し持つなどとされた謎の組織「テンプル騎士団」の後継である「キリスト騎士団」の指導者、つまり「グランドマスター」だ。

 キリスト騎士団の潤沢な資産を使い、船を南へと進めた航海王子は真の勇者だ。(実際は他人に行かせただけだが)

 

 なぜなら当時のヨーロッパでは、この世界は真っ平ら。海をひたすら南へと進んでいくと、世界の果てには「煮えたぎる海」が待ち構えており、生きては帰ってこられない、つまり「パイレーツ・オブ・カリビアン」の「ワールド・エンド」な世界と考えられていた。

 

 それじゃ、その「地の果て」はどこか?と言うと、現在のモロッコの南、西サハラ紛争の係争地「サハラ・アラブ民主共和国」にある「ボハドル(ボジャドール)岬」という、何の変哲もない小さな岬。

 

 「ワールド・エンド=煮えたぎる海」の伝説は、赤道に近づくにつれて次第に気温が暑くなるという当たり前の自然現象に由来していたが、当時の船乗りは「煮えたぎる海は本当にある。それが証拠に、地の果てに近づくと、みんな焼け焦げ、肌が真っ黒にされている」、と真顔で恐れていた。

 

 航海王子は、怯える船乗りたちをなだめすかし、12年もかかったが、ついに地の果てボハドル岬を越えて、「ワールド・エンドに煮えたぎる海はない」という、人類史上に燦然と輝く大発見?を成し遂げている。

 しかし、なぜ航海王子はそこまで「南進」に固執したのか?

 

 一つは、イスラム教徒のキャラバン(隊商)の力を借りずに、サハラ砂漠以南の地と直接交易し、高価な金や香辛料を手に入れたかったから。

 

 そして二つ目は、ヨーロッパに12世紀からあった「プレスター・ジョン伝説」。

 

 キリストの生誕を伝えたと聖書にある、「東方の三博士」の子孫、プレスター・ジョンが治めるキリスト教国家が東方にあり、西洋キリスト教国の危機の際には、助けに来てくれるという伝説だ。

 

 航海王子はプレスター・ジョンを見つけて、イベリア半島を制圧していたイスラム教徒を追い払ってもらおうと考えていた。

 

 そして三つ目は、「黄金の国ジパング」。

 

 航海王子も、アフリカに沿って南下し、インド洋に出て、ジパングにたどり着くことを夢見ていたらしい。

 

 今でこそ、わが国は近隣諸国などから「嫌われ者」になってしまったようだが、かつては西洋文明が外の世界に目を向ける原動力になったほどのパワーを秘めた、「世界最高のファンタジー」だったようだ。

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