歴史

防災歳時記4月7日 鉄腕アトム誕生と手塚治虫の”憂鬱”

   今から11年前の2003年の今日、4月7日、高い知能を備えた人型ロボットが誕生した。


   マッハ5で空を飛び、聴力は人間の1000倍。どんな計算も1秒でこなし、操る言語は60カ国語。サーチライトの目で闇夜を照らし、10万馬力で悪を倒すーー。


   もちろん、これはフィクションの話。正体は、ピンととがった髪型がトレードマークの「鉄腕アトム」だ。


   手塚治虫の「鉄腕アトム」の連載が月刊『少年』で始まったのが62年前の1952年の今日、そして、物語の中でアトムが誕生したとされるのが「2003年4月7日」なのである。


   アトムと言えば、ららら♪と耳によみがえるアニメの主題歌。心優しく弱気を助け、強気をくじく正義の味方。国産アニメ第一号として放映され、平均視聴率30%と大人気を誇ったアニメ作品では、確かにそんな「明るいイメージ」が強い。

   が、アニメの元となった漫画では、アトムはもうちょっと複雑な存在だ。


   例えば、「アルプスの決闘の巻」。芸術への感性や恐怖などの感情を持たないアトムは、人間の友人たちが音楽にうっとり耳をすませる姿をうらやましく思い、お茶の水博士に「人造心臓」を付けてもらって感情を得る。


   川のせせらぎ、鳥の声に感動し、喜んで森を駆け回るアトム。しかし、それを見ていた悪者に「感情のあるアトムなら倒せる」と狙われ、自分の体の数倍もあるロボットと対峙して恐怖に足がすくんでしまう。


   敵を倒すため、「人造心臓」を破壊してもらうアトム。戦闘が終わった後、自分はこれでいいんだ、と納得した様子だが、その背中はちょっとだけ寂しい。


   またある時には、敵から「悪の心を持たないアトムは不完全な存在だ」=ただ敵を倒すための道具じゃないか!と言われてショックを受けたりもする。(このあたり、かなり”感情”を持っているような気もするが……)


   子供向けとは言え、アニメのアトムがあまりに「勧善懲悪」になりすぎているのを、原作者の手塚治虫は複雑な思いで見ていたのだろう。アニメ絶頂の時期にはわざわざ、アトムがロボット軍に協力し、人間に反旗を翻す「青騎士の巻」を描いている。

   エッセイで「アトムは最大の駄作の一つ」とまで酷評した手塚治虫。原作(漫画)とアニメが違う!というのは、現代の漫画家さんたちにも共通する悩みかもしれないが、一方で、アニメ人気の恩恵もあってアトムが連載開始から半世紀を経て愛されているのも事実だろう。


   物語の中では、ロボットゆえになかなか市民権を得られなかったアトム。

 

   現実の社会では2003年、アニメスタジオのあった埼玉県新座市で市民に登録され、アニメキャラクターとしては初めて「特別住民票」も手に入れている。

 

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