歴史

防災歳時記5月2日 長崎国旗事件と国を侮辱すること

 今から56年前、1958年(昭和33年)の今日5月2日、一つの事件が長崎のデパートで起きた。

 

 このデパートでは日中友好協会主催の「中国切手・切り紙展覧会」が開かれ、天井からは中華人民共和国の国旗「五星紅旗」が吊るされていた。

 

 当時、日本と国交があったのは中華民国(現台湾)。当然ながら中華民国領事館からは「掲揚は国府(中華民国政府)との友好関係に悪影響を与える」との不快感が表明されていた。

 

 そしてこうした背景を受けて、右翼団体の男が乱入、五星紅旗を引きずり降ろした。

 

 当時の日本は中華人民共和国と国交がなかったから、この男に対し、軽犯罪法で科料500円の略式命令を出したのみだったが、中華人民共和国政府はこの対応に激怒し、日本との貿易を中止。

 

 結局2年間に渡って通商関係は凍結されることになった。

 

 刑法には「外国国章損壊罪」という罪がある。

 これは外国政府による親告罪だが、侮辱する目的で他国の国旗・国章を損壊すると、2年以下の懲役、もしくは20万円以下の罰金刑に処せられる。

 

 これまでにこの罪に該当したものはない。

 

 長崎国旗事件では、中華人民共和国を正式な国家として認めていなかったし、正式な国旗ではなかったことから、この罪は問われなかった。

 

 唯一、この罪に問われておかしくない事件が起きたのは、1993年、ワールドカップ初出場を決める日本・イラク戦、いわゆる「ドーハの悲劇」の際に、日本人サポーターが駐日イラク大使館の国旗を引きずり降ろし持ち去ったもの。

 

 しかしイラク側は「日本人の愛国心のあらわれ。郵便受けにでも返しておいてくれれば」と、寛容な姿勢を示し、告訴しなかった。

 

 最近は、隣国との関係もギスギスし、サッカー場でも心ない行為が起きて問題となっている。

 

 しかし忘れてはならない。

 

 いかに納得できないことがあったとしても、感情に任せて他国を侮辱すれば罪に問われる。

 

 同等の規定が、他の国の法律にもある。他国を感情に任せ侮辱することは、「世界的に悪」なのだ。

 

 いかなる時も、礼節の国たる日本人の矜持を胸に、冷静に行動することを改めて戒めたい。

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