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陸自史上最大の作戦 東日本大震災

陸上自衛隊 現在の実員数 約14万人。
創設から58年の歴史の中で史上最大の作戦は、言うまでもなく「東日本大震災への災害派遣」だ。
のべ派遣人員1066万人、派遣期間291日間、犠牲になった隊員は5名。
福島第一原発上空で放水する陸上自衛隊のヘリコプターのテレビ映像に釘付けになった人も多いだろう。
メディアで刻一刻と状況が報じられる裏側で、陸上自衛隊に何が起き、どのように作戦を遂行していったのか?
当時の陸上自衛隊トップ 火箱芳文前陸上幕僚長が2年近く経った今、「史上最大の作戦」の真実を語り始めた。

プロローグ 陸上幕僚長たる陸将

事に臨んでは危険を顧みず……

服務の宣誓

 

 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法 及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもって専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います。

 

自衛隊法

(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)

最終改正:平成二〇年六月一八日法律第七五号

 

(服務の宣誓)

第五十三条  隊員は、防衛省令で定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。

 

 

 

 

 

火箱芳文 前陸幕長

火箱芳文。昭和26年生まれ。

 

 陸上幕僚長(略して陸幕長)と言っても、自衛隊になじみのない方にはピンとこないかもしれない。

 

一言で言えば、14万人いる陸上自衛官の最高位で、戦前の陸軍やアメリカ陸軍で言えば「陸軍参謀総長」、つまり陸上自衛隊の作戦計画の最高責任者だ。

 

階級は桜星が4つ(陸上幕僚長たる陸将)で陸軍大将相当。警視総監などと同じ政令指定職(7号)で、自衛隊制服組で陸幕長より上位の職は、陸海空3自衛隊の最高位である「統合幕僚長」のみである。

 

14万人を擁する組織から選ばれるトップだから、歴代陸幕長には色々なタイプがいた。

 

深謀熟慮型の参謀タイプ、目から鼻に抜けるようなエリート官僚タイプ、実戦一本やりの師団長タイプ…。

 

 その中で火箱前陸幕長はキャラとキャリアが非常に分かりやすい。

 

福岡県出身。柔道五段。防衛大学校を卒業後、幹部レンジャー課程、空挺基本降下課程を修了。第1空挺団長、第10師団長、中部方面総監などを歴任。

 

つまりは、ハリウッド映画などで見る、とんでもない『特殊任務』を拝命し、百戦錬磨・屈強な兵士とともに輸送機かなんかで敵陣深く放り出される『特殊部隊の指揮官』タイプである。

それも天の配剤

 しかし、火箱氏のインタビューを進めるうちに、『特殊部隊の指揮官』タイプが偶然にも東日本大震災の時に陸上自衛隊トップにいた事は、「不幸中の幸いだったのかもしれない」と思えてきた。

 

あの規模の震災を政府や学者が想定していなかったように、当然ながら自衛隊にも、東日本大震災を想定した災害派遣の作戦計画は存在していなかった。

(そして今も被害想定を見直した首都直下地震や南海トラフ巨大地震の作戦計画はまだ作成中の段階である事を申し添えておきたい)

 

そうした「想定外の状況」下では、深謀熟慮したり、官僚的に役所の手続きを重んじたりしていては、到底対応が間に合わない事があまりにも多いからだ。

 

「作戦がない」、もしくは「作戦が破綻した」特殊作戦では、深謀熟慮するよりも、訓練によって体得した本能と直感で「まず行動する」ことが、結果的に正しかったりする。

 

 想定外の状況では、どんな事が起き、どんな行動をとらねばならないのか?本連載では、「作戦計画がない史上最大の作戦」を実施した陸上自衛隊の291日間を陸幕長の目からドキュメントする。

 

     (次回につづく)

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