医療技術

「肺のなかにオイル?」時代遅れの結核治療術で86歳の胸に異常見つかる

 日本でかつて「亡国病」と呼ばれて恐れられていた結核は、現代でも毎年新たに1万8000人近くが感染する病気だ。米フロリダ州の86歳の女性は、半世紀以上前に受けた治療によって、肺の中に大量のオイルが塊になっているのが見つかった。

 

 医学症例誌『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に紹介されたフロリダ大学医学部の報告書によると、この女性は胃から食道へ胃酸が逆流する「逆流性食道炎」の治療の際に、胸部レントゲンの検査を受けた結果、左の肺を包む胸膜に白く曇った部分が見つかった。

 

 医師は当初、血液か膿が石灰化している可能性を疑ったが、女性は結核治療のために20歳で受けた「油胸術」を記憶していた。油胸術とは抗生物質ができる以前に行われていた治療法で、胸膜内部に、植物油や石油を少量注入することで結核菌を死滅する効果があると考えられていた。

 

 注入されたオイルは、結核菌だけでなく、肺の血管や細胞組織まで傷つけるため、油胸術が廃止された1950年代以降、ほとんどの患者は肺から油を抜く措置を受けているため、今の時代に胸からオイルが見つかる患者はほとんどない。

 

 フロリダ大学のアビラシュ・コラタラ医学博士は「86歳の女性の場合は、治療を受けた後、結核の症状が治まったことから、そのまま放置されていたのでしょう」と指摘。

 

 そのうえで、逆流性食道炎の原因がオイルとは関係なかったことと、左肺の上部の組織は石灰化していたものの、肺の残り部分は正常に機能していて、手術を受けるリスクの方が大きいことから、摘出を行わない方針を決めたという。

 

 コラタラ博士は「油胸術の知識や臨床経験が乏しい若い医者が、レントゲン写真を見て肺がんを疑って不必要な検査をして、患者に余計な負担を負わせたケースもあります。時代遅れの治療法だからといって、忘れてはなりません」と話している。

 

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