感染症

抗生物質が効かないアシネトバクター菌 院内感染で4人死亡 鹿児島大病院

 鹿児島市の鹿児島大学病院は3日、今年4月までの1年間に入院していた患者ら15人から、ほとんどの抗生物質が効かない「多剤耐性アシネトバクター」や類似の菌が検出され、これまでに4人が死亡したと明らかにした。

 

 アシネトバクターとは、土壌や河川水など自然環境に生息し、健康な人の皮膚などからも見つかることがあり、多くの種類がある。このうち「多剤耐性菌」は、アシネトバクター感染症の治療で使われる抗生物質がほとんど効かず、欧米では1990年代に院内感染が多発し、近年では中国や韓国、東南アジア諸国でも流行するようになった。

 

 鹿児島大病院によると、昨年4月、同病院の集中治療部(ICU)の入院患者1人に続いて、同年10〜11月には一般病棟の入院患者2人から多剤耐性菌が検出されたのち、今年4月にはICUに入院していた2人が菌血症、肺炎を発症して相次いで死亡。

 

 さらに、多剤耐性菌ではないものの、カルバペネム系の抗生物質が効きにくい遺伝子を持つ耐性アシネトバクター「IMP-1」が、2016年9月以降に入院した10人から検出され、うち2人が菌血症を発症して死亡。一方、保菌していたが、感染症状はなかった4人も死亡していたことがわかった。

 

 病院の説明によると、15人のうち9人はICU在室中、残る5人は退室後に耐性菌が検出された。さらに昨年10月には手洗い場で「IMP-1」が発見されたことに続いて、今年4月〜5月にかけて行った環境調査で、保菌患者の病室や床ずれ予防マットレス3台から、多剤耐性菌が検出されたことから、ICU病室内の環境や医療器具に付着したアシネトバクターが、医療スタッフなどを介して感染が広がった可能性があると結論づけた。

 

 外部の専門家を入れた調査委員会で検討した結果、菌血症を発症した患者については、耐性菌が症状を悪化させた原因である可能性があると結論が出たものの、死因との因果関係ははっきりしないという。また保菌しているが症状が出なかった4人の死亡原因については、耐性菌との因果関係は認められないという結論に至った。

 

 今回の問題を受けて病院では、今年4月28日から5月6日にかけて、ICUの入院制限を実施。清掃・消毒レベルを通常よりも厳しく行うとともに、床ずれ予防マットレスはすべて新しいものに交換するなどの対策を行った。さらにICUではエリアの一部が汚染するリスクがあるため、8月下旬にかけて改修工事を実施し、この間に除染作業を徹底するとしている。

 

 国立感染症研究所によると、抵抗力が低下した患者が多剤耐性アシネトバクターに感染すると、肺炎や血流感染症、手術で受けた傷痕の感染症などさまざまな病域を引き起こす。

 

 日本では2008年に福岡県の福岡大学病院の患者26人が感染し、4人が死亡したほか、2009年から2010年にかけて東京の帝京大学医学部附属病院で59人が感染、35人が死亡したケースがある。

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