感染症

恐怖!脳を食べるアメーバ「鼻うがい」で感染 69歳女性死亡 米国

 寒くて乾燥しがちな今の季節から、花粉の飛散が始まる来春にかけて、鼻の中を洗浄する「鼻うがい」は、風邪の予防や花粉症の緩和に効果があると期待されている。米国では医師から鼻うがいを勧められた女性が脳炎で死亡する事件が起きた。世界でも200症例ほどしか報告がない、非常に珍しい「脳を食べるアメーバ」が原因だという。

 

 今年9月、国際的な感染症の専門誌『International Journal of Infectious Diseases』に掲載された症例報告によると、米ワシントン州シアトル市在住の69歳の女性は、鼻の右側に大きな発疹ができて、皮膚が赤くただれるようになったことから皮膚科を受診。医師は鼻うがいを勧めたが、症状は一向に改善されなかったという。

きっかけは鼻の皮膚炎だった…

 その1年後、発作を起こして救急車でスウェディッシュ医療センターに運ばれた女性はCTスキャン検査を受けた結果、脳に1.5センチの腫瘍のような病変が見つかった。

 

「患者は乳がんの病歴があるので、腫瘍が転移したのだと思いました」と神経外科医のチャールズ・コブス医学博士。だが腫瘍を取り除く手術の最中に見つかったものは、どう見ても「死んだ脳の組織」。そこでジョンズ・ホプキンス大学の神経病理学者にサンプルを送って詳細な解析を依頼。

 

 この間、患者は退院。大学病院からの報告書を見たコブス医師は、あり得ない病名を見た。「アメーバ性脳炎?馬鹿馬鹿しい!」しかし、不安になって連絡したところ、患者の容態が悪化していることを知ったことから、「すぐに手術室に戻ってください!」と命じた。

 

 再び開頭したところ、死んだ脳の組織は以前より巨大化していることがわかり、電子顕微鏡で調べた結果、アメーバが確認された。そこで、政府が所管する「米疾病予防管理センター(CDC)」に報告したところ、直ちに新薬が空輸されたが、時すでに遅く、患者は死亡。

マンドリルで見つかった病気

 

 解剖検査の結果、鼻にできた発疹からアメーバが見つかり、「肉芽腫性アメーバ性脳炎」であることが判明した。CDCによると、アメーバ性脳炎には、汚染された水を鼻から吸い込んで感染する「原発性髄膜脳炎」と、傷口から感染する「肉芽腫性脳炎」の2種類がある。後者は、オナガザル科のマンドリルで見つかった病気で、人間も感染することがわかったのは1991年だ。

 

 どちらも、脳腫瘍と間違われる例が多く、死後の解剖で見つかるケースがほとんど。特に肉芽腫性は検出された例が極めて少なく、感染源が特定されたこともほとんどない。

 

 米国では2010年8月、当時56歳と24歳の臓器移植患者が肉芽腫性脳炎を発症。ふたりとも1カ月前にアリゾナ州で死亡した27歳のヒスパニック系の造園業者から臓器移植を受けており、ドナー(提供者)は背中の皮膚にできた大きな傷に半年間苦しんでいたが、死因は脳梗塞だと診断されていた。CDCは臓器提供によるアメーバ性脳炎の感染は、想定よりずっと多い可能性があると示唆している。

 

 コブス医師は、鼻の皮膚炎がきっかけで感染が判明した患者について、「滅菌されていない水で鼻うがいをしたのが感染源」と推測。そのうえで、「ふだんどおり生活していれば感染しません。ただ鼻うがいでは殺菌された専用の洗浄液か食塩水を使ってください」と推奨している。

 

※食塩水は、沸騰させた水を人肌程度のぬるま湯まで冷まし、0.9%の食塩を入れて溶かして作る。この食塩水は鼻うがいのたびに作る必要があるので、市販されている洗浄水のほうが簡単だ。

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