歴史

古代バイキング戦士「女」だった!最初の性同一性障害か?

 

 中世8〜11世紀にかけてスカンジナビア半島やバルト海で活躍した武装船団バイキング。日本では1970年代に『小さなバイキングビッケ』というアニメ作品をきっかけに知られるようになったが、スウェーデンで100年以上前に見つかった戦士の骨が、実は女性戦士のものであることが判明した!歴史上、最初に見つかった性同一性障害の戦士だったのか?と注目を集めている。

 

バイキング時代の要塞都市で140年前に発見

 この遺骨が見つかったのは1878年、首都ストックホルム郊外のメーラレン湖に浮かぶビェルケ(Björkö)島にあるバイキング時代の都市遺跡からだ。

 

 ビルカ遺跡は、ゲルマン民族が建てたフランク王国の宣教師が9世紀に残した古文書に記録が残り、外敵からの襲来に備えて建てられた要塞都市だったという。

世界遺産登録されたビルカ遺跡

 この遺跡からは3000近い墳墓が見つかっており、このうち1100個は19世紀後半に発掘したもの。当時、考古学者ヤルマー・ストロペ(Hjalmar Stolpe)は王立アカデミーに提出した報告書のなかで、「最も注目に値する墓だ」と記述したほど、ユニークな構造の墓だった。

ゲーム板やサイコロも副葬されていた

 地下に埋められた木造の部屋の中には、モンゴルの騎馬民族のようなデザインの服装を身に着けた遺骨が残されており、その周囲には斧や剣、槍などの武器類が多数置かれていた。

 

 さらに、サイコロやゲーム用のコマ、鉄製のゲームボードが置かれ、部屋のすみには乗馬用の馬2頭が一緒に埋葬されていたことから、スウェーデンの考古学者は長年、社会的地位が高い将軍クラスの墓だと考えられてきた。

 

 最初の発見から約100年後の1970年代、Bj581と名づけられた遺骨を調べた研究者が、遺骨のなかに大腿骨が3本あることを発見。二人分の遺体が埋葬されていることがわかったが、その後の調査で、もう一体はBj581より約1世紀古い人物であることが突き止められた。さらにあごと腕の骨から、死亡年齢の推定を試みたが、当時の技術ではうまくいかなかったという。

最新技術で性差が判明

 英ケンブリッジ大学出版局が発行する学術誌『Antiquity』(2月19日付)によると、ウプサラ大学の考古学チームが遺伝子解析を行った結果、この戦士はXX染色体を持つ女性であることが判明した。

 

 戦士の骨は解剖学的に見ても、股関節の特徴が生物学的に女性で、全体に骨が細く、死亡したのは30歳から40歳の間だったという。さらに骨には戦闘で受けたような傷は見当たらなかった。

中世バイキングのジェンダーシステム

 この分析結果が公表されて以来、スウェーデン国内では学者や市民を巻き込んで論争が勃発。なかには「生物学的には女性でも、本人は男性として生まれるべきだと信じていたトランスジェンダー(性同一性障害)だったのではないか」という現代らしい解釈も飛び出した。

 

 研究チームは論文で「もしかしたら、一緒に埋葬された副葬品は、生前に所有していたものではないかもしれませんが」と断りながらも、「わたしたちは彼女が女性としてのアイデンティティーを持ちながら、戦士としての社会的役割を果たしていたと思います。ほかにも女性兵士が見つかるかもしれません。中世のバイキング社会で、女性の戦士が手厚く葬られたことは、当時のジェンダーシステムを考えるうえで、非常に興味深いです」と話している。

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