生物

見たものを石に変える 巨大ウイルス「メドゥーサ」温泉水から発見!

 

 感染症や食中毒を引き起こす「細菌」や「ウイルス」の違いをご存知だろうか?どちらも目では見えない小さな存在だが、細菌がひとつの細胞を持っていて、栄養を摂取して増殖する“生物”であるのに対し、細胞を持たないウイルスは、他の細胞を利用しないと生きられないという意味では“非生物”だ。

 

 その常識をくつがえすような巨大なウイルスが北海道の温泉の泥水から見つかった。名前は「メドゥーサ」だ!

巨大ウイルスが生物学の常識をくつがえす!

 

 一般に、細菌の大きさが1ミリの1000分の1の1マイクロメートル(μm)に対し、ウイルスはその1000分の1小さな1ナノメートル(nm)というのが生物学の常識。

 

 ところが1992年にフランスの研究者が見つけた「ミミウイルス」は違った!アメーバを宿主として増殖し、サイズとゲノムの長さは数多くの単細胞生物を凌ぐ大きさ(=750nm)と複雑さであったことから、「ウイルスは小さくて単純なもの」という固定観念がくつがえり、世界中の研究者が巨大ウイルスの調査を開始。

 

 日本でも東京理科大学の研究グループらによって、「トーキョーウイルス」や「ミミウイルス・シラコマエ」などが発見されている。

宿主のアメーバが休眠状態に陥る

 京都大学化学研究所の緒方博之教授や、東京理科大、生理学研究所などの共同研究チームは、北海道の温泉地の湯だまりと底にたまった泥水からアメーバを宿主とする未知のウイルスを発見した。

 

 粒子のサイズは260nmと、歴代の巨大ウイルスの中では、さほど大きくはないが、ゲノム解析の結果、461個のタンパク質遺伝子のうち、6割の279個がデータベースに登録されていない新規の遺伝子であることが判明。

 

 さらに、宿主のアメーバに寄生すると、感染過程で一部のアメーバ細胞が厚い膜をかぶって休眠状態(シフト化)に入ることがわかった。研究グループは、見たものを石に変えるギリシャ神話の怪物を連想させることから、この巨大ウイルスを「メドゥーサ」と命名した。

生物の祖先はウイルスとともに進化?

 さらに、メドゥーサウイルスはすべての「ヒストン遺伝子」をゲノム内に持っていることが判明。ヒストンとは、ヒトや植物、菌類、アメーバなど細胞を持った生物に必須な5種類のタンパク質で、その一部を持ったウイルスは過去にも報告されているが、全セットを保持しているのはメドゥーサウイルスが初めてだという。

 

 研究チームは、メドゥーサウイルスと宿主のアメーバの間では、進化の過程で数多くの遺伝子の受け渡しが起きていたことを突き止め、「生物の祖先は、古代のウイルスからヒストン遺伝子を獲得した可能性」を示していると結論づけた。今後はメドゥーサウイルスの感染過程を分子レベルで解明し、ウイルスと太古の生物がともに歩んだ進化の歴史を紐解くヒントをつかみたいと話している。

 

 なおこの研究成果は、米国の国際学術誌『ジャーナル・オブ・バイロロジー』に掲載された。

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