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「エイズウイルス消えた!」HIV患者 骨髄移植受け 世界2人目 英国

 エイズを発症させるHIVウイルスに感染した英国の男性が、骨髄移植を受け、薬物治療を止めた約3年後に、ウイルスが検出されなくなったと、英国やドイツの研究チームが5日、科学誌『ネイチャー』に論文を発表した。HIV患者の治療例は世界で2人目。

 

 HIVは、ヒトの体をカビやウイルスなどの病原体から守るTリンパ球やマクロファージという細胞に感染するウイルス。これらの免疫細胞のなかでウイルスが増殖すると、免疫機能が低下して、ふだんは感染しないような病原体にも感染しやすくなり、さまざまな病気を発症する。この病気の状態がエイズだ。

ドナーには遺伝子の突然変異があった

 英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンで感染症と免疫学を専門とするラヴィンダ・グプタ教授らによると、この男性は2003年にHIVの感染が判明して以来、抗レトロウイルス治療薬の投与を受けていたが、2012年には悪性リンパ腫の一種、ホジキンリンパ腫と診断された。

 

 これは血液のがんの一種で、骨髄で作られる血液細胞のもとになる造血幹細胞ががん化する病気であることから、特殊な骨髄移植を受けなければならない。

 

 ところが、チームが選んだ骨髄提供者は、通常のドナーではなかった。HIVが免疫細胞に入り込む際、CCR5というたんぱく質に結合するのだが、ドナーは突然変異で生まれつき、CCR5遺伝子を持っていなかったのだ。

 

 研究チームによると、移植によって患者の血液中の白血球はHIVに対する抵抗力が備わった。その16カ月後には抗レトロウイルス治療薬の投与を止め、さらに18カ月後にはウイルスが検出されなくなったことから、「“完治”したと言うには時期尚早だが、症状が治まって長期的な寛解状態だ」と今回の発表に踏み切った。

 

 CCR5遺伝子に突然変異があるドナーからの骨髄移植で、寛解状態になったのは、2007年に独ベルリンで治療を受けたティモシー・レイ・ブラウンさんに次いで今回で2人目。しかし、研究チームは、今回の治療法を、すべてのHIV患者の標準治療とするについては、致命的な合併症などを起こす危険性があるとして注意を呼びかけている。

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