医療技術

「治療費100万円!」歯科インプラントで事故続出!痛み3年も…国民生活センター

 高齢化社会に伴って、失った歯の代わりに、人工の歯根を埋め込むインプラント治療が普及する一方、「高い治療費を支払ったのに、手術直後から1年たっても痛みが取れない」とか、「余計な骨まで割られて、出血が止まらない」などといったトラブルが後を絶たない。全国の消費者センターに寄せられた相談を分析した国民生活センターが、事故を未然に防ぐため、消費者に注意を呼びかけている。

毎年60〜80件の危害相談

 インプラント治療は、失った歯の代わりに、チタンや合金製の歯根をアゴの骨に埋め入れ、これを土台として義歯を装着する保険適用外の外科手術だ。治療によっては、全身麻酔や鎮静剤の点滴など手術が大がかりになるため、歯科医選びには注意が必要だ。 

 

 インプラント学会は、治療の普及や歯科医の増加を背景に、2012年にガイドラインを定め、その4年後には改訂版を発表している。それにもかかわらず、全国の消費生活センターには、毎年60〜80件程度のトラブルに関する相談が寄せられているという。

高額な治療費を支払ったのに…

 相談内容を分析した国民生活センターによると、2018年12月31日までの5年間に寄せられた相談件数は合計409件。相談者の7割以上が50代以上で、最も多いのは60代の31.1%、次いで50代(21.5%)、70代(17.4%)と続く。

 

 治療費に関する相談は240件。その7割は「50万円以上」で、多く(111件)が「100万円以上」だった。なかには「500万円以上」と答えた回答者も3人いるという。

需要が増える影でトラブルも…

 治療を受けた後に、痛みやインプラントのぐらつき、脱落のほか、せっかく取り付けたのに、撤去しなければならなくなるなど、身体的症状を訴えるケースが多い。

 

  例えば、茨城県の50代の女性は2017年4月、「治療の相談に行った次の予約日にいきなり手術され、出血が止まらず、救急センターに入院した」といった相談を寄せている。

 

 また、埼玉県の80代の女性は、歯科医の勧めですべての歯をインプラントにした数年後の2016年、定期検診でレントゲンの写真を見た歯科医から「自分の手に負えない」と大学病院へ。そこでは「アゴの骨が腐り始めている」と診断されたという。女性は、手術前に、骨粗しょう症の薬を服用しているとお薬手帳を見せていたにもかかわらず、歯科医はインプラント治療のリスクが上がることを見落としていた可能性が高いという。

 

 ほかにもインプラントの埋めこみが浅かったとか、手術中に前歯の上の鼻腔底が割れて出血が止まらなくなったといった技術不足の問題や、術後から痛みが引かず、ほかの病院で、鼻の空洞にインプラントが刺さって蓄膿を起こしていたことがわかったなどといったケースなどがあいついで報告されている。

痛みが1年以上も続く

 

 国民生活センターが集計した409件の相談のうち、痛みやしびれなどの身体的症状が生じたのは211件。このうち102件で「1年以上、症状が続いた」とされており、さらに44件は「3年以上」、なかには「10年程度」という人も21人いた。身体的症状があった人の9割が、現在も痛みの治療を続けている。

 

  それにもかかわらず、相談者のなかには、なかなか治らないから、「紹介状を書くので大学病院でもいいから好きなところへ行け」と歯科医から匙を投げられたり(2017年12月埼玉県 50代女性)、神経が麻痺して感覚がなくなったのに、歯科医には「神経はいつ戻るかわからない」と言われて不安が募った(2017年1月神奈川県 60代女性)など、治療後の対応に問題があるケースが目立つ。

「手に負えない」匙を投げる歯科医も

 もちろん、歯を失った人にとって、入れ歯やブリッジに比べれば、インプラントに変えて「よく噛めるようになった」と満足する声は高い。その一方で治療費が高くなる分、不満点も多い。

 

  2017年の医療施設調査・病院報告によると、同年9月の1ヵ月にインプラント手術を実施した医療機関は全国で2万4014施設、手術件数は2万7383件で、1施設あたりの手術件数はひと月あたり1.1件と多くないため、歯科医の治療経験やスキル、知識には差があると考えられるという。

 

 国民生活センターは、治療を受ける前に、患者自身が情報収集し、歯科医には、糖尿病や骨粗しょう症、貧血、高血圧など、全身の健康状態を告げ、治療方法や費用、リスクの説明を求めるようにしてほしいとしたうえで、不具合が生じた場合、セカンドオピニオンを検討してほしいと呼びかけている。また、公益社団法人「日本口腔インプラント学会」でも相談窓を案内している。

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