宇宙

ISS生活1年 双子の宇宙飛行士「老化が早まった!」テロメア伸びて再び縮む

 米航空宇宙局(NASA)は、宇宙生活が人間の健康にどのような影響を及ぼすかを調べるために、国際宇宙ステーション(ISS)に1年間滞在した宇宙飛行士に関する研究結果を発表した。

 

 スコット・ケリーさんは、老化に関わるDNAのテロメアが長く伸びるなど、健康面でさまざまな影響が確認されたが、半年後にはほぼ正常になった。しかし、免疫やDNA修復に関係する一部の遺伝子は、元通りにはならなかったという。

一卵性の双子にどんな変化が?

 この実験は、一卵性双生児の兄であるスコットさんが2015年3月から340日間にわたってISSに滞在したもの。弟のマークさんも元宇宙飛行士であるため、同じ遺伝子を持った双子を放射線量の多い無重力空間と、地上で生活させることで、身体にどんな変化が起こるのか比較するのが目的だ。

「命のロウソク」に重大な変化

 米科学誌『サイエンス』に12日付で掲載された論文によると、スコットさんの身体に起きた変化は大きく分けて2点。ひとつめは白血球にある「テロメア」が異常に伸びていたことだ。テロメアは、染色端の末端を保護する部分で、細胞分裂のたびに少しずつ短くなって数が減っていくことで、最終的に細胞が老化すると考えられていることから「命のロウソク」とも呼ばれている。

 

 この変化は地球帰還直後から報告されている。宇宙滞在中にゴムひものように伸び切っていたテロメアは、地球に戻ってからわずか2日以内に縮み始め、半年後にはほぼ正常な長さになった。「ほぼ」というのは、いくつかは宇宙に行く前よりもさらに短くなったからだ。

宇宙生活1年で「老けた」

 コロラド州立大学でがんを研究するスーザン・ベイリー教授はこの変化を受けて「宇宙では筋肉量を減らさないよう熱心に運動したことでテロメアが伸びた可能性があるが、因果関係は不明だ。地球帰還後にさらに短くなったということは、放射線や無重力など、さまざまなストレスが、テロメアに持続的なダメージを与えている可能性がある」と指摘している。

 

 さらに重要なのは、病原体やウイルス、環境の変化によるストレスなどから体を守る免疫システムと、DNA修復に関する遺伝子は、地球に帰還したあとも元通りにはならなかった。

前立腺がんの再発も

 スコットさんとマークさんのふたりは、2007年に前立腺がんと診断を受けて治療を受けているが、約1年間のISS滞在で宇宙線や放射線にさらされたことが、将来的にはがんの再発をもたらす可能性も否定できないという。

 

 研究グループによると、これまで宇宙空間を旅した人間は559人。そのうち、300日以上の長期滞在を果たした飛行士は8人とほんのひとにぎりだ。2020年代から2030年代にかけて、月や火星への有人探査を計画しているNASAは、今回の研究成果をもとに、宇宙空間における長期滞在が人体に与えるリスクを軽減させるための安全なシステム確立をめざすとしている。

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