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世界ペンギンの日:南極の皇帝ペンギン「3年間ヒナ育たず」異常気象が原因か

 4月25日は「世界ペンギンの日」。しかし、南極にある皇帝ペンギンの繁殖地では、過去3年間にわたってヒナが育っていない現状が明らかになった。英国の南極観測局(BAS)が科学誌『アンタークティック・サイエンス』で発表した。

 

 BASのピーター・フレッツェル(Peter Fretwell)博士らのグループは、英国の観測所があるハレー基地近くに生息する皇帝ペンギンのコロニーをとらえた衛星写真、過去10年分を比較した結果、2016年から3年間にわたって生息数が激減していることに気づいた。

 

 ハレー基地周辺には、世界の生息数の5〜9%に相当する皇帝ペンギンが住んでおり、毎年1万4000組〜2万5000組のペアの繁殖実績が報告されていたことから、世界で2番目に大きなコロニーだと考えられていたが、3年連続でヒナの繁殖がなかったという。

世界で最も過酷な子育てをする鳥

 皇帝ペンギンは、ペンギンの仲間では最も体が大きく、体長は1メートルを優に超える。南極大陸で繁殖するのは、中型のアデリーペンギンと並んで皇帝ペンギンの2種類だけなのだが、アデリーの繁殖シーズンが、雪溶け後に岩場が露出する夏場なのに対して、皇帝ペンギンはマイナス60度にも至る冬の氷原で繁殖を始めることから、「世界で最も過酷な子育てをする鳥」だと呼ばれている。

 

 南極の秋にあたる3〜4月に上陸したのちは、捕食者の手が届かない内陸部まで行って、繁殖相手を探し、5〜6月ごろに産卵。産卵で疲れたメスが海へ向かうと、その後はオスが単独で約2カ月もの間、絶食状態で抱卵を続け、8月ごろにヒナが生まれ、ようやくメスと給餌を交代する…という独特の子育てを行うのだが、繁殖成功のカギを握るのは、海氷量が安定していることが重要だという。

糞が無い!

 ハレー基地周辺は、英国の観測隊が基地建設を始めた1956年以降、60年近く海氷の量が安定していたが、2016年は世界的な異常気象の影響で海氷が激減。これは翌2017年、2018年と3年連続で続いたため、生まれたヒナはことごとく死亡してしまったという。

 

 上空から撮られたコロニーの写真を見比べると、2015年には黒いスポット状の糞がたくさん確認できるが、昨年の写真ではほとんど見られないという。

 

 しかし絶望するのは早い。ハレー基地近くの生息数は減ってしまったが、ここから少し離れたドーソン=ランブトン氷河では生息数が明らかに増えているという。

引っ越しを決意か?

 フレッツェル博士は「環境条件が悪化したことから、ペンギン自身がひっこしを決めたんでしょう」と指摘したうえで、「海氷の減少が気候変動が原因かどうかはわかりませんが、南極を象徴する皇帝ペンギンを研究することは、南極大陸の将来を理解することにつながります」と話している。

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