環境

世界最深マリアナ海溝「核実験の放射性物質」エビから発見!

 1950〜60年代の冷戦時代に、米ソ両国が競いあうように繰り返した核実験の影響で、世界で最も深いマリアナ海溝に生息する甲殻類に高濃度の放射性炭素が蓄積されていたことが明らかになった。中国科学院の研究チームが米地球物理学会の学術誌に発表した。

 

 広州の中国科学院の研究チームは2017年、太平洋のマリアナ諸島の東に位置するマリアナ海溝をはじめ、ニューギニア海溝など周辺の3つの海溝で、深海生物の調査を実施。深さ6〜11キロの海底にすむ「端脚(たんきゃく)類」という甲殻類について調べたところ、腸や筋肉組織から自然界よりもはるかに高濃度の「放射性炭素14」が検出された。

米ソ冷戦時代の核実験が海の生態系に

「放射性炭素14」は、宇宙から降り注ぐ高エネルギーの放射線(宇宙線)で、自然界のあらゆる生物に存在しており、その比率はほぼ一定している。しかし生物が死ぬと、炭素の補給が止まり、存在比率が下がることから、考古学や地質学の分野では、化石や地質の年代を調べるのに、放射性炭素を利用している。

 

 一方、冷戦時代には米ソ両国が繰り返した核爆発実験によって、大気中に放出された中性子が窒素と化学反応を起こして放射性炭素が倍増。核実験の停止に伴って、大気中の「爆弾炭素」の濃度は低下したが、ほどなく海面に落下して、海面近くの海洋生物に取り込まれていった。

大気中の「爆弾炭素」が海中に

 中国の研究チームが調べた甲殻類は、超深海に生息するにもかかわらず、放射性炭素の濃度が、腸内の消化物に含まれていたものより、筋肉に含まれているほうが高かった。

 

 海の水は巡回しているので、海面に落ちた爆弾炭素が深海に達するには、少なくとも1000年近くかかる。このため研究チームは、深海の甲殻類が海面近くから沈んだ生物の死骸を食べ続けたことで、爆弾炭素が筋組織に取り込まれて蓄積された可能性が高いと指摘している。

 

 また、甲殻類は海面近くに生息する種は、寿命が2年足らずと短く、体長も平均2センチだが、超深海では10歳以上長生きすることも珍しくなく、体の大きさも4倍以上の9センチに成長するものもいるという。

 

 これは、食料源が乏しく、低温で水圧が高い深海という厳しい環境で生活することで、代謝や細胞の入れ替わりが遅いため、エネルギーを長期間保存して長生きしやすい反面、爆弾炭素の蓄積量が増えたものと考えられるという。

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