感染症

子犬に舐められた女性 謎の感染症で手足切断 米オハイオ州

 米オハイオ州に住む女性マリー・トレーナー(Marie Trainer)さんは、休暇を過ごしたドミニカから帰国後、激しい腰痛と吐き気に襲われて救急搬送された。意識を失って生命維持装置につながれたマリーさんが次に目覚めたとき、手足を失っていることを知って絶望した。当初は旅先で熱帯病に感染したものと思われていたが、最近になって、子犬に舐められたのが原因だと明らかになった!

急速に壊死が進む

 オハイオ州のオールトマン救急病院や地元メディアによると、マリーさんは今年5月、カリブ海に浮かぶドミニカ共和国のプンタ・カナビーチで休暇を満喫した後に帰国。その数日後に、立っていられないほどの腰痛と高熱、吐き気を訴えて、5月11日に救急搬送された。手の施しようがないとして、すぐに看護師をしている娘が勤めるオールトマン病院に転院。

 

 その時点で意識を失って、手足の皮膚がどんどん赤紫色になって壊死していった。感染症専門のマーガレット・コーベ医師によると、この時のマリーさんは精神が錯乱して意味不明な言葉を繰り返す「せん妄状態」で、血栓も発生。皮膚の壊死はあごから耳、鼻の先にまで急速に広がり、昏睡状態に陥った。

熱帯病だと思ったら…

 医者は「手足を切断しなければ死んでしまう」と宣告したが、あきらめきれなかった家族は、同じ州内のクリーブランド病院でセカンドオピニオンを取ることを決意。ヘリコプターで搬送されたが、診断は同じだった。

 

 オートマン病院に戻る道中、夫のマシュー・トレーナーさんは病院の検査機関から「イヌやネコの口の中にいる細菌に感染したのが原因」だと電話で告げられた。マリーさんは集中治療室(ICU)に運ばれ、手足を切断。血管をつまらせていた血の塊を取り除こうとしたが、筋肉の損傷が激しく、腕を残すことはできなかったという。

イヌ・ネコのほとんどが保菌

 だが、イヌやネコに噛まれたり、舐められたからといって、誰でも感染するわけではなく、がんや糖尿病、高血圧、脾臓摘出などの持病があって免疫力や抵抗力が下がっている場合は感染リスクが高まる。

 

 日本の厚生労働省によると、国内のイヌの74〜82%、ネコの57〜64%がカプノサイトファーガ・カニモルサスを保菌していると言われることから、ほぼほとんどのイヌやネコが保菌していると考えたほうがいい。

 

 イヌやネコは発症しないが、人間の場合は、重症化すると敗血症や、マリーさんのように全身の血管内で血液が凝固する播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全などを起こして死亡するケースも少なくない。

日本での感染は…

 マリーさんが病院に運ばれてから、すでに2カ月以上が経過し、これまでに6回の手術を受けている。先月14日には、高額な医療費を支援するため、クラウドファンディングが立ち上がり、これまでに3万755ドル(約325万円)の資金調達を達成している。

 

 現時点ではイヌ・ネコの保菌検査を行っている民間の検査機関はなく、排除することは不可能だ。

 

 ワクチンはなく、イヌやネコに咬まれたり、引っ掻かれたりしないようにするしかない。日本では1993年から2017年末までに計93人が感染し、このうち19人の死亡が報告されている。93例のうち、2011年以降の発生は68人にのぼり、背景にはペットブームの影響もあると考えられる。

 

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