医療技術

味覚を失った男「舌がツルツルになる」原因は?シンガポール

 毎日歯を磨くとき、磨き残しや食べカスが残っていないかどうかはチェックしても、舌については注意がまわらない人が多いのではないだろうか?シンガポールの64歳の男性は、口内炎のようなヒリヒリする痛みが何カ月も続いたので病院を訪れたところ、舌の表面がツルツルになっていることを指摘された。

 

 大きく口を開けて鏡を見てみよう。通常、舌には中央部分に溝があり、表面にはブツブツとした大小さまざまな突起がある。これは「舌乳頭」と呼ばれていて、主に味覚を感じる神経の末端である「味蕾(みらい)」が備わっている。

 

 米マサチューセッツ内科外科学会が発行している「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に今月16日に掲載された症例報告によると、シンガポール国立大学病院を受診した男性患者には、このブツブツが一切なくなって、ツヤツヤと輝いて見えたという。

 

 診察したアンドリュー・ロビンソン医師は、すぐにこの異常を発見。聞くと、過去半年間、何を食べても味はせず、ずっと口内炎のような痛みを我慢していたという。

 

 血液検査を行った結果、男性はビタミンB12が極端に欠乏することによって、悪性貧血による舌炎を発症していることがわかった。舌炎の種類はいくつかあるが、この男性の場合、ビタミンB12を吸収するためのタンパク質を作る胃壁の細胞に対して、自己免疫機能が暴走して悪さを行うため、ビタミンB12が吸収できなくなっているという。

 

 ビタミンB12は赤血球の細胞骨格を維持するために欠かせない物質で、欠乏すると新たな血液を作ることができなくなる。ビタミンB12の欠乏による貧血は、人口10万人あたり年間1〜2人程度発症する確率があり、そのほかにも胃の全摘手術や、ピロリ菌による胃炎、アルコール依存症や偏食なども原因になるという。

 

 ビタミンB12欠乏の場合、まずはビタミンB12の注射を始めるが、この患者の場合も、治療開始から2週間で口の痛みが良くなり、1カ月後には舌乳頭が戻ってきたという。とはいえ貧血改善後も、定期的に注射を受け続ける必要があるという。みなさんも口の中に違和感を感じたら、舌をよく観察してみよう。

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