健康問題

一滴も飲まないのに…飲酒運転で逮捕の謎「体内でアルコール醸造していた!」

 

 米国で5年前、飲酒運転で逮捕された女性が、その後、酒を一滴も飲んでないのに体内でアルコールを醸造してしまう非常に珍しい「自動醸造症候群」であることが判明し、無罪となった事件があった。

 

 また別の46歳の男性は、2011年に親指をケガして抗生物質を投与されて以来、同様の症状に悩まされるようになったが、最近の研究で、特定の腸内細菌が体内でアルコール物質を醸造している可能性が明らかになった!

酒も飲んでないのに酒気帯び運転

 1件目は2014年秋、ニューヨーク州西部に住む女性がパンク事故で走行不能になった際、酒も飲んでいないのに、吐く息から法律で定める4倍以上のアルコール物質が検出されて逮捕された事件だ。

 

 その後、女性は体内で発酵が起こり、アルコール物質を醸造してしまう「自動醸造症候群」であることが証明されて、2016年に無罪判決となった。このニュースは当時、広く注目されたが、非常に珍しい病気のため、患者も少なく、原因がよくわからないままだった。

 

 胃腸の病気に関する専門誌『BMJ Open Gastroenterology』に今年8月に掲載された報告によると、米オハイオ州の46歳の男性は、2011年1月にハリケーンの被害で吹き飛んだ屋根の修理中に親指をケガしたのを機に、抗生物質セファレキシン錠(250mg)を1日3回飲むようになってから、原因不明の記憶喪失に陥り、うつ病を発症。

 

 ある朝、飲酒運転の疑いで警察に逮捕された際、「酒は一滴も飲んでいない」と主張して、呼気中のアルコール検査を拒否して強制入院となった。家族が似たような症状で逮捕された例を思い出して、オハイオ州のクリニックを尋ね、便に含まれる腸内細菌を調べた結果、ビール酵母として知られる「出芽酵母」と、ブラウディという「熱帯フルーツ酵母」が検出されたという。

炭水化物抜きの食事を続け…

 自動醸造症候群の疑いが高まったため、アルコールを含まない炭水化物の食事を食べる実験を行った結果、8時間後に血中アルコール濃度が急上昇したという。これを機にビール酵母菌を取り除くための抗真菌薬を2週間服用するとともに、炭水化物抜きの食事を続けたが、その数週間後に症状が再発。そこでリッチモンド大学医療センターを受診して専門治療を受けることになった。

 

 2カ月の入院中、患者は内視鏡検査で胃腸内のあらゆる部分を調べ、微生物を徹底的に取り除く薬を投与されて治療は成功したのだが、なんと医者の目を盗んで、1回だけピザを食べ、ソーダを飲んだ直後に症状が再発!その後、6週間にわたって非常に強力な抗菌薬ミカファンギンの点滴を受け続けた結果、ようやく腸内細菌が死滅。

 

 現在は腸内細菌叢を正常化させるため、大量の乳酸菌ラクトバチルス・アシドフィルス菌を飲み続ける生活を1年半も続けているという。

非アルコール性脂肪肝との関係は?

 げに恐ろしきは腸内細菌の存在という話だが、最近、中国の研究で自動醸造症候群を引き起こす原因となるのが、脂肪肝の一種と関係している可能性がわかった。

 

 北京の首都児科研究所付属児童医院(Capital Institute of Pediatrics)の研究グループが、今年9月に医学誌『Cell Metabolism』に発表した論文によると、アルコールをほとんど飲まないのに、肝臓に脂肪が蓄積する「非アルコール性脂肪肝炎(NAFLD)」の患者43人と、健康な人48人の便を比較した結果、6割以上の患者の便から、アルコール醸造酵母が見つかったという。

 

 ただし、これらの患者は誰も自動醸造症候群ではなかったため、ほかの自動醸造症候群の患者の便から摘出した酵母菌をマウスに投与した結果、3カ月後に脂肪肝を発症し始めたという。

 

 国立国際医療研究センター肝炎情報センターによると、非アルコール性脂肪肝の原因は特定されておらず、正確な患者数がわからないが、人間ドックを受ける人のうち、3〜4割でこの病気が見つかっていることから、国内で推定100〜200万人の患者がいると考えられている。研究が進んで、自動醸造症候群が非アルコール性脂肪肝を引き起こす原因のひとつであることが裏付けられれば、新たな治療法の開発にも結びつくとして注目されている。

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