医療技術

恐怖!天然痘の動物実験中 誤ってウイルス感染「指が壊疽していく」米国

 北米の先住民族(インディアン)を大量に殺し、生き残った場合でも顔に醜いあばたが残ることから、江戸時代には「見た目が悪くなる病気」として忌み嫌われていた天然痘。種痘の予防接種が普及したことによって1980年以降、世界から根絶したと考えられていたが、米カリフォルニア州の研究所で実験中、研究員が誤って指先に天然痘ウイルスを注射してしまう事故が発生した!

動物実験中に事故発生

 米疾病予防管理センター(CDC)の25日の報告によると、事故が起きたのは2018年12月、カリフォルニア州サンディエゴの生物医学研究所で、マウスの尾に天然痘ウイルスを注射していた26歳の女性研究員が、誤って同じ針を自分の左手の人差し指に刺してしまった。

 

 研究員はすぐに指を15分間流水ですすいだあと、上司に報告し、地元の救急センターを受診。その2日後と9日後に、再びクリニックを訪れたが、驚いたことにどちらの場合も、二次感染を防ぐための特別な助言はなかったと報告書には書かれている。10日目に指先が腫れだしたことから別の病院に足を運んだとき、ようやく事態が急転直下し、サンディエゴ州の公衆衛生当局とCDCに連絡があった。

 

 感染後12日目には38.3度の高熱が出て、指先の腫れがどんどん痛み出し、左腕の脇の下のリンパ節の腫れなど全身に症状が出てきたことから大学病院の救急センターへ搬送された。

地上から根絶しても治療薬はない

 約60年前には世界33カ国に存在した天然痘は、徹底的なワクチン接種(種痘)と封じ込めによって、ソマリアでの1977年の患者発生を最後に、地球上から根絶したとWHO(世界保健機関)が宣言した病気だが、40年たった今も有効な治療薬は開発されておらず、ウイルスはバイオセーフティーレベル(BSL)4の施設に厳重保管されるだけだ。

 

 この研究員の女性も筋肉の壊死が心配されたため、米国で唯一承認されている抗ウイルス薬「テコビリマット(Tecovirimat)」を投与された。この薬は、臨床試験でウイルスが細胞内に広がるのを防ぐとして、サルやウサギでは効果が確認されているが、ヒトでの臨床試験は行われたことがないものだ。

バイオテロの恐怖

 抗ウイルス薬を1日2回、2週間飲み続けると同時に、傷の二次感染を防ぐために「クリンダマイシン」や「セファレキシン」などの抗生物質を投与された結果、発熱やリンパの腫れは引いて、痛みも緩和したという。それでも指先の壊死は94日間治らず、もちろん、外出はままならなかった。

 

 報告書によると、この研究員は実験を開始する前の2018年9月、天然痘ウイルスを扱うリスクについてカウンセリングを受け、ワクチンの予防接種を受けるよう指示されていたが、この申し出を拒否していたという。「ACAM200」と名づけられたこのワクチンは、WHOが根絶宣言を発表してからも、天然痘がバイオテロに使われるおそれがあるとして、米国の医薬品会社が開発した生ワクチンだ。

副作用を恐れて予防接種を拒否

 日本国内では1976年に天然痘のワクチン接種が廃止されたため、それ以後に生まれた世代では予防接種の経験がないが、26歳の女性が提示されたワクチンは、ウイルスが弱毒化された一般的なワクチンよりも、多くの副作用があるため、接種を拒否したという。

 

 CDCは今回の事故は、「テコビリマット」が天然痘患者の治療に安全に使われた最初の例だと報告しているが、ほかの患者にも効果があるとはわからないとして、天然痘ウイルスを扱う研究所では必ずワクチン接種を行うよう強く訴えている。

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