感染症

薬が効かない「悪魔の耐性菌」で年間8000人以上が死んでいる!

 抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」によって、日本では年間に8000人以上が死亡しているという推計結果を、国立国際医療研究センター病院(東京・新宿区)が発表した。世界的に耐性菌による死亡者が増えるなか、これまで国内での死亡実態は明らかになっておらず、死者の数を全国規模で調べたのは今回が初めて。

 

 食中毒を引き起こすサルモネラ菌や、汚染された食品が原因になる腸管出血性大腸菌などのように細菌による感染症の治療は、抗生物質(抗菌剤)が基本となる。

 

 しかし、単なる風邪など、本来は抗菌剤が効かないウイルスに対しても安易に服用を繰り返すうちに、細菌も抗菌剤が入ってこないよう遺伝子を変えたり、ブロック機能を強化させることで、薬が効かない耐性菌が出現し始める。

 

 薬の開発と薬剤耐性菌の出現はいたちごっこで、世界の医療・保健分野では現在、喫緊の重要課題だ。耐性菌は、免疫が落ちている病人や高齢者が感染すると重症化しやすく、入院患者など院内感染を通じて市中にも広がるなど深刻な影響が出てきている。

なぜ薬剤耐性を持つのか?

 そこで、国立国際医療研究センター病院AMR(薬剤耐性)臨床リファレンスセンターの研究チームは、耐性菌のなかでも代表的な「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」と「フルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)」の2種に絞って調査を実施。

 

 全国の協力先医療機関から情報が集まる厚生労働省のデータをもとに、耐性菌で死亡した可能性が高い菌血症の症例数を割り出して、死者数を推計した。

 

 その結果、MRSAが原因だとみられる2017年の死亡者数は4224人と推定され、2011年(5924人)に比べると減少傾向にあるが、一方でFQRECの推定死亡者数は、2000人近く多い3915人と右肩上がりに増えていることがわかった。2種の合計は8139人になることがわかった。この2種以外の耐性菌による死亡も含めると、死亡者数はかなりの数にのぼる可能性が高い。

 

 研究グループによると、米国ではすでに年間3万5000人以上、欧州では3万3000人以上が死亡していると推計されており、30年後には世界で年間1000万人が耐性菌で死亡すると予測されているものの、日本ではこれまで実態が明らかになっていなかった。

 

 今年4月、国連は薬剤耐性菌が世界的に増加し、危機的状況にあるとして各国に対策を強化するよう求めている。また日本が議長国となった6月のG20大阪の首脳宣言でも「薬剤耐性に取り組むための研究開発を促進する」といった一文が盛り込まれている。

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