歴史

古代エジプト「ミイラの声」を再現 3Dプリンターで声道作成!(動画)

 

 昨年のNHK紅白歌合戦では、30年前に亡くなった美空ひばりさんをAI(人工知能)で復活させて新曲を歌わせることが話題になったが、こちらはなんと、3000年以上前の古代エジプトのミイラの声の再現に成功したというニュースだ。

古代の声を再現する技術

 科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に今月23日に掲載された論文によると、英ロンドン大学電子工学科のデヴィッド・ハワード氏は2003年、動物の喉の声道部分をCTスキャンしたデータを元に、3Dプリンターを使って立体印刷する技術を開発。興味を持ったヨーク大学の考古学者ジョン・スコフィールド氏とともに、古代の人間の声を再現する実験が始まった。 

ミイラに喉の組織は残っているのか

 声を出す仕組みは、生き物の種類によって異なるが、人間の場合、吐く息を喉仏にある「声帯」という2枚のひだの間を通して震わせることで発することはよく知られている。しかし、この段階では「声のもと」に過ぎず、声帯から唇までの「声道」という空間を通ることで共鳴し、ふだん耳にしている声ができる。

 

 人が死ぬと骨以外の柔らかい組織から腐敗していくため、筋肉や粘膜から構成されている声道が残ることはないが、それを可能にするのがミイラだ。

「真実の声」ネシャムン

 チームはリーズ市の博物館が所蔵している3000年以上前のエジプトのミイラに着目し、声の復元に挑んだ。「ネシャムン」というこのミイラは、紀元前11世紀のラムセス11世(在位:紀元前1099〜1069年)の時代にテーベ(現ルクソール)のカルナック神殿で書紀兼司祭として働いていた人物。

 

 ネシャムンのミイラが1820年代に博物館に来て以来、内視鏡検査やレントゲン、CTスキャン検査などを受けたおかげで、さまざまな事実がつきとめられてきた。例えば、ヌビア人の遺伝子を受け継いでいて、生前は発達したアゴを持っていたが、歯周病の問題を抱え、50代半ばで亡くなったことなどだ。

病気の治療にも

 さらにもうひとつ、毎日の祭礼や儀式の際には、祈りを唱えたり、歌をうたうなどの重要な役目を担っていたという記録が残ることから、ミイラと一緒に発掘された碑文には、「マート・ケル(maat kheru)=真実の声」という称号をもらっていたというから、まさにこのプロジェクトにうってつけと言える。

 

 そこで、ネシャムンに再び語らせようと、ミイラをCTスキャンにかけ、喉から唇までの声道の長さを測定。その結果、のどちんこの手前の硬口蓋から上唇までの長さが81.4ミリと、現代の男性に比べて短いことがわかった。

 

 CTスキャンデータを元に3Dプリンターで声道の立体モデルを作成し、肺と声帯の代わりに音源となるスピーカーと接続することでネシャムンの声を再現することに成功。それでは3000年前の古代エジプトの声を聞いてみよう。

 

 

 再現されたのは、Bedの「e」とBadの「a」の中間のような音だ。チームによると、ネシャムンのミイラの舌はカラカラに干からびて大部分が欠けているほか、のどちんこの根元の軟口蓋が無くなっていたため、完全に本人の声とは言えないが、結果は非常に満足できるという。これを美声ととらえるかどうかは、人それぞれだが、この技術が広まることで、考古学がもっと身近に感じられるようになったり、将来的には声を出せない病気の治療にも応用できると期待されている。

 

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